ストーリー・オブ・マイ・ライフ

すごく好きだったから、残しておきたいなと思った。

12月17日マチネ アルヴィン:田代万里生、トーマス:平方元基

12月18日ソワレ アルヴィン:田代万里生、トーマス:平方元基

12月23日マチネ アルヴィン:田代万里生、トーマス:平方元基

 

でも何を残しておきたいのかな、と思うんだよ。

トーマスがね、アルヴィンが出てきたことに全く驚かないのはなんでだろ?ってところからスタートしたんだけど、終演後にあらすじをちゃんと読んだら分かった。あれは頭のなかでお喋りしてる架空の友達みたいなものってことでいいのかな。トムにとってアルヴィンはそんな存在で、特に街を出て離れたあとはそんな風にお喋りする時間があった。アルヴィン本人とも会うけど、日常で顔を合わせることが少なくなってからは頭のなか、このお話だと心の奥底のほうでのお喋りが増えてて、ある意味では架空のアルヴィンが強くなる。だからあまりにも幼いような描写が出てくるし、大人になってから実際に会ってるときの回想のアルヴィンは少し印象が違った。例えばサラを連れて行ったとき、トムに気に入らないみたいだって言われてアルヴィンが返す「ちがう」の音とか。あの音、凄く好き。あと「遅刻だよ」の弱さとそれでも引き込む静かな力とか。毎回ハッとしたんだよ。それからお母さんのことを歌うところ。声が深く、というか低く?響くあのアルヴィンの一面は、たぶんトムがあんまり見てなかったところなのかなって。もちろん"変わり者"で"個性派"なアルヴィンが居たことは本当だけど、本屋の経営者である大人で"賢い"アルヴィンだからね。トムに執着する自分の気持ちとか、トムを困らせそうな部分は見せないし、サラと幸せになって欲しいと思ったのも本音でトムに話すアルヴィンの言葉に嘘はないんじゃないかなと思った。すごいよね~♪とかもアルヴィンは本当にただそう思ってるのを、後ろめたさが勝つトムが嫌なほう嫌なほうに受け取ったのかなって。あそこのネオンカラーの照明、トムのこと追いつめてるよねぇ。毎年アルヴィンからくるクリスマスカードも。でもアルヴィンはただ返事が欲しくて、会いたかったんだろうな。重荷になるつもりはない。だから、会いに行かない。

初見の最後、トムがアルヴィンの話をさせてください、って明るい声色で言ったとき、なぜかぼろぼろ涙が止まらなくなって、カテコ中ずっと泣いてた。その前のシーンくらいから膝抱えてぎゅってしながら見たい、って思ってて、あれ、なんだったんだろうな。3回目もわりとそれに近かったんだけど、スノーエンジェル作るところから泣きたくなって我ながら早すぎるってツッコミ入れたよ。アルヴィンの最期の話、君はそこにいなかったから分からないよ、疑問だけ増えてくんだよって現実が悲しい。悲しいんだけどそれが生きていくことで、ふとした日常にトムはアルヴィンのことを思い出すんだろうな。思い出すために、他の人の記憶にも残るように弔辞としてアルヴィンの話をたくさんする。約束、守ってるよね。「人が死ぬと良いことを話すんだよね」「弔辞っていうんだよ」これ、台詞が入れ替わるのが良いなって。泣き笑いみたいにトムが言ってからラストに繋がっていくの好きだった。

アルヴィンは寂しかったのかなー。お母さんが亡くなってて、18歳のころにはお父さんも病気をしてて、お家は本屋さんで、その本屋さんとお父さんが大好きで、当たり前のようにその本屋さんを手伝うことを決める。そこに無理があったわけではないけど、落ち着いたら大学に行こうってぼんやりした意識がみえて、でもたぶん状況は落ち着かなくて、ゆるやかに、真綿で首がしまっていくように”そこ”に居続けることから動けなくなる。そんなに悪い生活じゃないとも思ってそうだから、自分から外に出るきっかけは作らないし、そうなるとトムの「こっちに出てこない?」って提案は突風が吹いたみたいにアルヴィンのなかを一掃した感じだったのかな。そりゃ、はしゃぐよね。で、やっぱりあの「来るな」はひどい。トムに酷いことを言ってる自覚があって、時期が悪い、そう時期が悪いしあの悪循環を自分でどうにかするのって難しいし、だから結婚を延期しよう、なんて断ち切るようなことしか言えなくなっちゃうのも分からなくないんだけどひどい。雁字搦めを上手くほどけないトムを子供というのは簡単なんだけど、でもなんか、あの抜け出せない感じ、分かるところあるなって思っちゃうから始末が悪い。トーマスの話だから当たり前かもしれないけど、こうやって書いてると本当トーマス寄りで観てたんだなぁ。

アルヴィンとお父さんの仲が良いことは分かるんだけど、トーマスのお家の感じが全然透けてこなくて結構冷え切ってたんじゃないかなーと思った。子供(トム)がクリスマスに友達(アルヴィン)のお家にいる、お父さんの本屋さんは2人の秘密基地、大学に進学したトムが帰省して、課題をやってるあの部屋はアルヴィンのところ、とか結構気付くとあれ?と思うところがあって。大学進学のお金とか出してくれるけど、それ以上でも以下でもないというか。そういうところがサラへの求めすぎてると思う、に繋がるのかな。たぶん家族になろう、家庭を築こうという努力を見たことがない。トムの書くお話の源に家族はいない。ただ、アルヴィンだけ。あれ、見てる際中思わなかったけど、結構依存してるね?というか依存してないと自分で最初に書いた頭の中で架空の友達と話す、が実在の人物にならないね、これ。え、なんで今気付くの自分。ちょっと待って。だってそんなに依存は感じなかったんだよ。うわぁ、書くと見える世界が変わる。次はこの意識でみるのか。いやでも全然違う弾ぶっ放してきそうだからな。ゲネ映像だけでも弟チーム、全然違うもんね。太田アルヴィン好きそうなんだよなー。

トムにもアルヴィンにも少しずつ自分が見えて、2人が大好きだった"お話""物語"が私も大好きなんだよ!って言いたくなる。"お話し"の話は、好きに決まってるのよ。だってトムが夢中になってトムソーヤを読んだんだろうなってことが分かるし、あの本屋さんの隅から隅まで分かってるアルヴィンが羨ましいんだもん。どうしても前より本を読む時間が減ってることになんとなく居心地が悪くて、でも読まなくて、読めばいいのに手を伸ばさなくて、こんな文章を書いていたりする。でも"お話し"は逃げないから。好きなときに読めばいいんだよって。全然そんな話じゃないのに肯定してもらいたかったのかな。勝手にそんな風に思った。