煙突もりの隠れ竜

単純なんだけど、まず150分全く飽きさせないのが凄い。笑って泣いて気付いたらクライマックスなのよ。どうなってんの?あと相変わらず圧倒的な情報量なのに全く混乱させないのも凄い。本当に竹村さん天才だと思うし、各キャラクターの事前情報の出し方が上手いんだよなぁ。幻獣たちの言葉で語られる、おとぎ話で、いまの話で、せかいの話。

 

・たぬき守 西分綾香 「んなっ」

あらすじを読むと主役は竹村さんのチョーチ、とされてるんだけど(そういえばあのあらすじから受ける印象とは話がちょっと違ったな)物語を引っ張って、この世界の案内をしてくれるのは西分さん演じるたぬき守。めちゃくちゃ可愛い。小っちゃいもの代表で煙突もりの掃除夫のお世話係。一声目からいつもと声が違う…?って思ったんだけど西分さんめっちゃ声変えられるタイプか!この声すごい好き〜!どっちが本体?どっちも本体!ってなるパペット使いは、あの姿勢しんどそうだな…!ってなるんだけどものともしてないように見えるのが凄い。強い。かと思えばアクモブにいたりしてビビる。その早替えどうなってんの。

雪男とイモとどったんばったんして賑やかで、チョーチにも一生懸命話しかけて頑張って、とにかくくるくる変わる表情と表現がとっても豊か。へへローに関してはちゃんと出てやらない不死鳥が悪いから泣かなくていいよ。たぶんまだ庇護者がいても良いくらいなのかとも思ったけど、あの世界であれだけみんなとやり取り出来るってことは化けたぬきとしては大人なのかな。「みんなと仲良くしたい」って純粋すぎて恥ずかしいくらいなのに、たぬきが真っ直ぐに言うからそうだよなぁ、それが1番だよなぁって思っちゃう。化けたぬきは一世代一匹だけど他に普通のたぬきの仲間もいたりするのかな。

お母さんのところの「うーそぉ…」からがもう泣けて泣けてしょうがなくて、健気すぎて困った。寂しいよね、そうだよね、って寄り添いたくなる。そこから「嘘のうそぉ!」ってペカーッって笑って立ち上がれる強さの表現に胡散臭さを感じないのが凄いんだよ…汚い大人の目も綺麗にしちゃう。西分さん本当こういう役似合うよね。「いっつもニコニコしてろよ」ってマモヘイに言われても大事な人を傷つけられたら泣いちゃうのは当たり前で、あそこの「チョーチ…?」からぺたんって座って動けなくなって、子どもみたいに大泣きして全く泣きやめないの、どっか遠くの記憶にあるから、たぬきにとってチョーチがすごく大事なことが分かる。あんな泣かれ方したらどうにか泣きやまそうとするし、その方法が"笑わせる"なのがチョーチの優しいところであの泣き笑いのたぬきもすごく好きだったな。煙突に近付ける唯一のこの子が、こんなに頑張れる子で本当に良かった。チョーチの優しさを正しく受け取って、前を向いて進んでいける。

 

・チョーチ 竹村晋太朗

全面的にロック爺が悪いからアレなんだけど連れ去られたらもっと焦ろうな!?「大丈夫だからぁー!」ではない。連れ去られた人間の情報が上がってこない、のあたりで身内いない!?子ども死んだ!?と思ったよ。幻獣の写真を撮って、のエピソードが弱かったのかなぁ。チェキなの?そしてその新聞に載せるために羽ばたいてくる手は何者なの?とか。

とはいえ、もうなんか最後の「お前に似たたぬきが助けてくれって言うからさ」で全部繋がって、子どもからしたらそんなこと言われてもそんなの知るかバカ!だろうし、でもそれで納得させられちゃうキャラクターとしてのチョーチってすごく強かったんだなぁって思った。全く言語の分からないところにいてもなんかニュアンスが伝わるくらいのことって普通にあるし、ノンバーバルコミュニケーションのほうが大事って言われてたりするのも、このワードレスの余韻、余白との関連性だよね。黒竜が憑依(憑依でいいんだよな、あれは…)して煤を払うのにまさかの巨大ハタキでの大立ち回りがクライマックスだったわけだけど、あんなハタキでやる殺陣で大泣きすることある?って話で長物っていえばそうなんだけど"人の死なない殺陣"って新しいなって思った。

ところであの黒竜、登場の瞬間からハクさまー!って思ったんだけど色が違うか…あ、マレフィセントだ…ってなったの多分間違ってないと思う。

 

・不死鳥 日永麗

「ふっさん〜!」とちびっこ幻獣たちに慕われて、意外とそこそこに面倒みてそうな良い子(良い鳥?)。転生を繰り返す長い時間を"忘れる"ことが必要だったんだろうなと思う。とはいえその辺のモンモとかよりは昔を覚えているから達観してるとこもあり、惹かれることを知らないからオットーに近付く。あれは恋なのかなぁ…。差し出した花を振り払われる場面だけを見た可哀想の情かな、とも思った。そこの違いが分からない。もしかしたらない?あとは私なら、私なら、って想いを持ったことがなかったのかなぁとか、それとも忘れるほどの過去に思い焦がれたことがあって記憶の琴線に触れているとか。あそこの日置オットーの服装が変わりながら過去を示すとこ、ジョス!?とかニアミスさせるのマジで趣味悪りぃぞ…!って思いました(褒めてる)。そしてその段の世界、和装だった過去あるのね?とか。わりと客演の女の子に哀しい役をふるよね。

不死鳥の羽根が広がり動く人間CG凄いなぁと思ったしとっても綺麗だった。これはアクションモブさんたちの功績。あの人たちマジで1番恐ろしくない?やってることと精度の高さがハンパないのよ。

 

・ガジャタ=ラミン 牧田哲也

なんか物凄いかっこいい人出てきた…!?と思ったら最前列の前を歩きながら落とし物拾って差し出しててとっても紳士…!この、恐ろしいほどの賢さで自分のビジュアルすら使いこなす人、一体どの立ち位置なのかな?と思ったらまさかの幻獣大好きっ子で(大好きっ子)幻獣の言葉使いながら恍惚にお目目キラキラしててただのおたくだー!仲間ー!ってなった。めっちゃ好きで溢れてた。可愛い。努力の人だ。しかも努力の方向が仲良く暮らすにはどうしたらいいのかな、であの地位まで登りつめてんだもんね。幻獣の研究職とかにいかなかったのはなんでだろ?って思ったけどあんまりそっちは確立されてないのかな。普通に私と幻獣、みたいな本とか書きそうだけど。

キマイラとの関係性が好きで「"私を"助けてくれ」って全部理解して言ったの無茶苦茶かっこよかった。柔軟で視野が広くて、だからこそ分断を選べる。これからもずっと幻獣が大好きなんだろうし、みんなから貰ったものを大事にしてたまに思い出しては手に取って、あの体験は夢じゃなかったんだよなって独りごちてそう。そんなところに誰か遊びに来れたらいいのにね。雪男なら来れるかなぁ。

と、とても素敵な人で終わるかと思いきやカテコの自由っぷりに呆れ(あそこそれアウトです‼︎って言ってたの丹羽さん?本当マジ令和だぞ…って思ったよね)タイツは、まぁタイツだけど…ってノリノリで着るんかい!と思い、柿喰う客、行ってみたいんだけどどうなん…と二の足踏んでる。

 

・オットー 日置翼

花を差し出しながら実はDVとかサイコパスとかそういうやつ…?って結構本気で思ってました、ごめんなさい。めちゃくちゃ純粋にカレンのこと大好きだった。しかしチョーチもだけどオットーも不死鳥に連れ去られたらもうちょっと焦ろうな…?普通に手を引かれて一緒に行くの、ヤケとかそういう感じでもなさそうだったし助けられたからにするにしてももうちょっと帰るアクション欲しかったかなぁと思う。最後のほうね、帰り際に不死鳥を見てくれるのは嬉しいんだけど受け取った何かは"何か"であって、好意とか恋情とかそういうのではない感じがした。 どこのシーンだったか覚えてないのが悔しいんだけど、オットーの立ち回りで刀を持った日置さんがしゃがむように後ろに低く重心移動させてやった動きが物凄いかっこよくて、瞬間的に爆アガりした。それ!好きです!!!

 

・カレン 丹羽愛美

にわさんめちゃくちゃ美人さんですね…?

オットーからの花を振り払う動作に滲み出る嫌悪感が上手すぎて、うっかりマジでオットーがなんかやべぇんだと思ったよ(本当にごめん)。病を隠す行動と分かってからの切なさと強さと、でももっと晒してやればいいのよ!大丈夫だよ!ってわりとここも涙なしには、って感じで、きっとこの物語の先で儚くなってしまうのが分かるんだけど、きっとずっとオットーはそばにいて、柔らかく包んでくれたんだろうなと思った。幻獣に近くない人間(モンモ)として、たぶんこの幻獣に近すぎる他のキャラクターたちからは離れていたけどきっとカレンがこの世界の標準くらいなのかなぁ。幻獣がいても驚かないけど何も思わない、くらいの。

しかしカレンの出番が多くないからってアクモブとしての活躍エグくなかった?無茶苦茶立ち回り多かったように見えたんだけどアクションめちゃくちゃかっこいい。

 

・イモムシ花 黒田ひとみ 「ちー!」

えー、かわいい。めちゃくちゃ末っ子ムーブなのに、九尾に言わなきゃだめ!言わなきゃ分かんない!って伝えられるの物凄く強くない?基本的にちびっこたち賑やかにドタバタしてるけど真理ついてくるよね。蝶々になったカテコ、毎回ネタ振りされてたんだろうなってアタフタしてたけど観に行った回はガジャタな牧田さんに爆笑させられていやゲラなのはいいんだけど、だから令和だからさ…とは思う。

 

ジャックフロスト雪男 柏木明日香 「に!」

スノーウルフ!「何それの質問は受け付けなーい!」えぇーーー!?笑

他の世界、って言った瞬間に、ん!?ってなったけどやっぱりビューロだったー!なるほど、こんな感じに出てくるんだな。ガジャタにお前賢いなぁ!って言われるのは当然で幻獣の世界の考察中だったのかな。段の世界におけるビューロ、組織としてめっちゃ使い勝手がいいけど本当に謎が深い。そもそもビューロに属するにはどうしたらいいんだろうね?"世界に干渉しない"ためには世界が段を成していることを知る必要があると思うんだけど、パラデュールでは世界のトップたちだけがそのことを知っていて、この煙突もりの世界ではモンモの偉い人であるところのガジャタが知らない。もしかすると教育的に段を成してることを伝えてる世界もあるのかな。それでも"世界"の秩序を守れる=干渉しない、でビューロ…?原型となった世界とかある?平和への教育水準高すぎだろ…フィルの落ちた世界…?ヴェトモンズを攻撃でなく治癒に転換出来る世界。ガストンすらそこからの物資を受け取る。そしたらロケッツはそこから来た…?しかしそうするとビューロがロケッツみたいなの許せないの分かるし、あそこらへんの立ち回りかっこよかったな。たぬきとかに、え、誰!?ってされてるのは面白かったしね。人の変身には疎いんだな。…と思ってたらアフタートーク的打ち上げみたいな西分さんのインスタライブで竹村さんがロケッツは違うとこから来たって言った…!マジか、世界広いな。

 

・キマイラ 森田晋平

また、ガストンさんとは真逆の方向にとんでもねぇヘキの塊みたいなキャラクター出してきたな…!?森田さん、日頃からそんなにクセ強めの役が多いんだろうか。それとも壱劇屋だけ?とりあえずファンのかた生きてます?これまたとんでもねぇキャラクターだよ…(2回目)。

ゴロゴロ丘はモンモ嫌いが多いと言われてて、それは話が進むにつれてモンモと関わったときにそのイヤな部分を沢山見たからかなと思った。だってこの人めっちゃちゃんとした人だもん…。ちょっとばっかし血の気が多くてケンカっぱやいのと真実強いのと怖い見た目に騙されるけど。「ジョ↘︎は!?」って助けに行っちゃうし、全然逃げられるのに捕まって時間稼ぎするし。ジョ↗︎が語るキマイラは慕いたくなるアニキだよね。義理と人情?

 

・九尾 春名真依

はんなりお狐さん。低めにくる声めっちゃ好き。オープニングかな?お面を前に行進してくるようなステージング良かったー。お守りさんたちは霊力の何かなのかなーと思ってたんだけど、まさか本当にそれ"だけ"でへへローに来てて驚いた。だから本当客演の女の子に哀しい役が多いのよ。哀しいよ。ただの女の子じゃん。あの子はあれで救われたのかな。救われてたらいいな。

 

・ロック爺 長谷川桂太

すっとぼけ爺さん、だいたいお前のせいだからな!なんだけど(話が始まらないとも言う)長い生を生きることは偉いことだからね。不死鳥の忘れてることも覚えてる、ロックはたぶん本質的には忘れないものなのかな。不死鳥と長い一生を生きてるあいだには色んなことがあったじゃろ?って話してるとこの、ロックの若いころであろう声がさ?瞬間的に無茶苦茶かっこいい声だったじゃない!?長谷川さんのこの声の役きたらやばい。ぶわぁって体温上がってヒィッって声飲み込んだもの。やばいやばいやばい。あの感覚久しぶりでびっくりした。

 

・ザ・ロケッツ 岡村圭輔

ちっちぇー!自己顕示欲と承認欲求がすごいな!?主人公になりたいと思ってその方向に振り切れるのがすごい。そのエネルギー他に使えた気がするけどこうしか使えないからこの絶妙に自分の中にもいる感情を刺されていやぁな感じがするんだろうな。嘘つくんならつき通せ、とか、筋道はもっとちゃんとつけとけ、とか、やることがハンパだから生かされた感じ?小物のくせに絶対懲りないだろうから落とし前はビューロにつけてもらお。あの注射!でテンション上がったのに台無しですよ。その吸い込むやつもまたどこかで出てくる?

〇〇ミュがまさかのロケミュでびっくりしたんだけど特にパロとかではなかったよね…?(新感線のせいですぐパロか!?と思っちゃう)ロケミュのとこだったと思うんだけどセンターシンメでバッキバキのキレッキレで踊るみのりちゃんがめちゃくちゃかっこよかった。やっぱダンス上手いー!今回の振付も好きだったな。ジャンル色んなの取り混ぜてる感じが楽しい。

 

・ドン 小林嵩平

好戦的なのかと思えばジョ↗︎ジョ↘︎と離れるとそんなに心細そうな顔すんの!?三位一体の頭可愛い。そりゃキマイラに甘いとか仕方ないとか言われる。キマイラも大概だけど。武器が何それ見たことない、みたいな二刀流・回し捌きでだから小林さん器用すぎるし(小道具番長のほうもとんでもない)上手すぎるし本当強くてかっこいい。飛んだり跳ねたりの滞空時間とかどうなってんのかと思うよね。アクション映えがすごい。

 

・ジョ↗︎ 藤島望

ゴロゴロ丘の子でキマイラのこと崇拝…まではいかないのかな。でも頼れるリーダーだと思っていて、それにつく三位一体の1人であるはずなんだけど、すごく感性が柔らかい。不思議な立ち位置にいるなーと思った。キマイラとは違う意味で視野が広いというか副リーダー、補佐の視点の人。たぬきたち小っちゃいものたちに助けらて反発しそうなところ、きちんとお礼が言えるのゴロゴロ丘だとジョ↗だけじゃない?一歩引けるんだよね。外から見ると高圧的なキマイラが実は一番筋を通すこと、話が進めばもちろん分かるけど説得力持たせてるのはジョ↗だなぁと思った。だからこの子がゴロゴロ丘で生きてる。ドンが意外と甘いところを冷静に対処するのがジョ↗なんだろうな。藤島さんの表現すごく好き。

 

・ジョ↘︎ 石川耀大

捉えられちゃうからジョ↘としてはそんなに出てこないんだけど助けに行くキマイラがかっこいいから捕まってくれてありがとう!(違う)ちょっと弱気な強がりかな。末っ子ポジションな情けない感じも覗くんだけど、この子もゴロゴロ丘の子なんだな、と思うとやっぱりキマイラの懐が深い話になる?受け入れたなら仲間。仲間を助けるのは当然。…キマイラかっこいいの話になってる。ちょっとね、どうしたって情報量が多いからこぼれ落ちててごめんだよ。

 

舞台上、所狭しと駆け回る演者たちの熱量と、それを今、生でだからこそ受け取れる客席、幸せなんだよなぁ。