五彩の神楽 荒人神

壱劇屋さん、はじめまして。

 

何年か前から存在は知ってて、面白そうだなー観てみたいなーと思ってたんだけどどうにも腰が上がらなくて月日が過ぎ、五彩の神楽が始まってもきっと通ったら楽しいんだろうなーと思いつつチケット購入ページを開いてみては閉じ。なんで辿り着いたかといえば職場で無茶苦茶なストレス要因をドバッと喰らわされて、紅茶も甘いものもパンも好きなものいっぱい買ってみても収まらず、なんなら買い物しながら泣きそうで、これは多分だめなやつだなって冷静な自分が言ってて、情緒めちゃくちゃにしてくれるっていうツイートを見たうえでちょうど予定と予定のあいだに入れ込めそうだったから、もうぐちゃぐちゃにしてくれ!と思ってねじ込んだからです。すごい理由。ひどい。あと全く口に合わないもの出されてもそのあとの予定が最高キメ込んでたからっていうのもある。本当に失礼なことに知ってるの"壱劇屋”って関西の劇団の東京支部の人たちがワードレス殺陣の芝居やってるっていうだけで(演者さんの名前なんて誰も知らなかった)ちょっとそれだけで飛び込むには勇気がいったんだよ。今回で覚えたから次からは怖くないし知ってる人たちになったから大丈夫。

 

普段だったら面白かった演目はだいたいドバーっとツイートすることが多いんだけど、ネタバレせずにうまいこと頼んだ!って演者に言われて、なんならほんのちょっとのツイートにすら本人たちからばんばんいいね飛んでくる状況で、待て待て下手なこと言えん!どっからネタバレか分からん!とこの演目だけ見た己は思う。だって書き出しに白が筆を持って召喚するように…とか絶対だめなんでしょ?ファンタジー要素満載だなって見方をした…とかこれもだめか?迷ったすえにこっちにすることにした。そして千秋楽も過ぎたからネタバレ解禁されたし。まさか出てた本人たちがネタバレだから出てたって言いませんでしたってツイートしてたの凄い世界だな!?と思ったよ。や、きっとここまでの一作でも見た人は察してた仕様だと思うんだけどさ。そんなことないのかな。会場で察したやつ?ちなみに会場まで行ってたら完全に初見の私ですらあの墨絵できっと出て来るんだろうなぁってなったけど。前説あったし。本編もこれまでの物語のオマージュで進んでるから後半どーん!のやつだな、と。分かっててもアガるやつ。全部観てきた人はきっと主人公以外の登場人物にも気付けたりするやつだったのかな。

 

観てる最中は怒涛の殺陣にガンガン音がきて概念のアドレナリン大放出で大変だっていうのに、思ってた以上にワードレスから見える芝居のストーリー処理にフル回転させられて追いつけなくて、なのに情動だけで涙出ててもうこれなんなんだと。終わった直後に話の内容説明してみて?って言われても全然出来る気がしなかったんだけど、たぶん私にとってはそれが良くて、じわじわずーっとこういうことかな、こんな解釈かなって考えられたのが観劇の醍醐味として味わえた感じ。上演台本読みたかったなー。でも読んじゃうとイメージというか話が固まってしまいそうでそれもなんか違うんだよなー!っていうのは結構贅沢な悩み。1回の観劇嚙み続けられるの楽しいよねぇ。

主人公の荒は腕っ節が強くて便利屋稼業を営み、それを元という青年と一緒にしている。一緒にしているっていうか依頼の窓口的なところが元なのかな。人の役に立ちたいって想いは元から強く感じた。で、荒はその元を助けるためにいるというか。その2人の前に現れるのが全身真っ白な墨絵師白。舞台美術としてはじめから垂幕に描かれてるこれまでの作品の主人公たちはこの子が書いたんだな、と分かる。ぴょんぴょこ動く様子、2人から相手にされてなくてもあんまり関係なーい!な感じがよく言えば浮世離れしてる。普通に言えば鬱陶しい。何しに来たん?ってなるのに絆されていく王道展開。気付けば3人でいる。ここまでの展開に前4作のオマージュ(主人公の男女逆転?)を挟みながら、どんな”助け方”をしていくのかみせるの上手いなーと思った。元は頼まれたそのままを信じすぎで危うくて純粋、その純粋を濁らせたくないんだろう荒は絶対に元の前では人を殺さない。いなくなった途端にバッサバサいくんだけどね、それ、見せたくないんだねって。でも段々と助けを求めてきた側が依頼が完遂されると(多くは人探し)虐げる側に変わっていく。助けないほうが良かったんじゃ?が見えて、特にその想いが荒に積み重なっていくように見えた。だけど、荒の動機がどうしても「元の望んだことをしたい」に見えて、荒が助けないほうが良かったと思うのは、助けたことによって”良いことをした”と”良いことをしたい”と思ってる元の気持ちに影が差すからじゃないかなって。荒自身は誰が助かろうが虐げられようが元が良いならそれでいいと思ってそう。なんかね、荒って元が第一で唯一でそれ以外の人も行動も感情も知ってはいるけど自分にないというか、薄い膜で覆われてるというか、そっちに知恵とか知識回す気がない感じがしたんだよね。元を黒く染めたくない=人の醜い部分を見せたくないが強くなりすぎて自身が染まってしまう。元は元で人の醜い部分を知っていくから(あの女の人にご飯?出してもらってるお店?のヒモっぽさ抜群のDV男とかね)本当は荒が隠す必要ないんだけど元の純粋さをなくしたくない荒の純粋に黒い”何か”が反応したのかな。荒の元への想いが強くなるほど、純粋が高潔に縋るようになるほど=元本人の現状(醜さに触れる)と乖離していくところに黒が沈んでいく。堕ちていく荒の戸惑いが見えるのめちゃくちゃ好きだったな。

堕ちた荒を救わんとすべく白に召喚されるように登場する白い衣装を纏った前4作の主人公たち。思い返すとここからファンタジーが強くなるんだなぁと思って、自らの筆で描いた人物たちを招ける白、その招かれた人物たち、さらに悪感情の化身たち(黒いお姉さんたち綺麗だったなぁ)が見える元、ってもしかして人ならざる人だったりする?白との繋がりから主人公たち見えるのは人でもいけるかなって気分なんだけど、明らかにあの化身は見えるものではないし、そういう演出もきっと出来たんじゃないかなと思うんだけどしてないから(戦ってるしねぇ)元って小っちゃい神様とか、なんか生まれたてで人間界で「良いことをしておいで」って言われた異界のものとか。人になりたい人でないものとか。なんかそういう存在なのかなぁって思った。荒はそれのお守りをしてる的な。だから元だけは守るんだけど、そっちにだけ振ったスペックが仇となって黒い”何か”に気付かない。でも黒い”何か”が何したかったのかは分かんなかったなぁ。象徴だからそこに意思はないし荒の一部分として考えてもいいのかな。元が剣の稽古してるの見てるシーンとか一瞬コミカル覗くの帝王可愛いよ!?ってなったけど(あんなにお綺麗なのに闇の帝王と呼ばれる黒い”何か”)。ここらへんの余白をこねくり回すのがだいぶ楽しいんだけど本編観てるときはガンガンの音に怒涛の立ち回りがひたすら展開されるから、えぇい!細けぇことは気にすんな!ブッ飛べ!とでも言われてる気分でまぁジェットコースターだった。

白を纏った主人公たちが悪感情の化身や荒と闘いながら潰え、でも元を支えていくのが分かる展開が熱かったなぁ。賊義賊のコウの明るさとか、憫笑姫のミラのお姉ちゃん~~~!があそこだけで分かって泣けるの本当に凄い。で、ここの女性陣2人の立ち回りが、まぁすごいやばいすごいでこんなに動ける女優さん見たことないよ!?ってなった。荒の竹村さんが図抜けてるのはそうなんだろうけどそれにそんなに合わせていけるんです!?トップスピードと緩急のつけかた天才?これは早乙女兄弟にぶち込んでも大丈夫。というか速さは勿論なんだけどあの重さが乗るのがやばい。これは色んな武器使い分ける竹村さんが顕著だったんだけど、それぞれの武器を持ったとき動かしたときの重さが全部見えるのめちゃくちゃ興奮した。太刀筋の軽さと重さがきっちり出るの。最初振り回してるだけの元の大津さんもそうで、この人絶対上手いぞ…?と思ったら後半がっつりきて喝采上げちゃったもんね。大津さんはあととにかく目が良かった。目のお芝居が最高。ミラの西分さんも目、コウの小玉さんは口元、それぞれ役と本人の強さを活かしたところなんだろうなぁと思った。竹村さん?全部。あれは竹村晋太朗という才能だよ。あのね、わりと最初のほうに客席に背中向けてて首をクイって一瞬上げるように動かしてから立ち回りに入ったところがあったんだけど、あのモーションがとにかく好きでギュン!って鷲掴みされた。

黒い”何か”に覆われた荒に光を差せるのは元だけど、その”何か”は本当はずっと隣にあってある意味では共存していくものなんだって、元に隠さなくていいものなんだって、荒が分かったから光が届いたのかな。最後の歩き始める荒に、元と白が合流してってところ、一瞬荒の闇にいた記憶はないのかなと思ったんだけど(表情がね、あまりにも違うから)たぶん受け入れたからこそこれまでとは違う接し方で元と居られそうな未来が見えたのかなと思って、2人をぎゅーってするの凄く良かったな。もう情報量多すぎて記憶がだいぶ曖昧なんだけど。今から2回目見たいわ…(書いてる時点で1週間経ってる)。そしてだらだら書いてたから絶対内容に矛盾があるんだけど、まぁいいや、楽しかった記憶だから。

 

最後にどうでもいいこと。抽選会の回に行ってたんだけど、あの手の抽選会で列のアルファベットと番号の数字書いた紙をそれぞれ箱に入れて持ってきてるの初めて見たよ!そういうのはチケットの半券でやるんじゃないのか!それかせめて座席表の紙持ってきて!存在しない席言ってたから!笑

知れば知るほどアフターイベントが楽しそうなんだけどあの本編やったあとになんて情緒してんだよ…って果てしなく思い続けるんだろうなと思った。