髑髏城の七人Season月-下弦の月-

何度も何度も言ってしまうんだけど、本当にこの下弦にハマったのが自分で意外過ぎて、いまだになんでだ…なんでなんだ…って思う。そしてきっとこれから思い出すときにも「なんであんなに好きだったんだろ?」って思うんだと思う。だから、やっぱりこの大好きは書いておかなきゃなーってつらつらしてみる。

 

髑髏城の七人って作品のもつエネルギーってすごいなぁって思うのは、物語として面白いことはもちろん、それぞれのキャラクターが魅力的で、そのキャラクターのニュアンスを変えることで物語にもたくさんの枝葉が生まれて、でもその全てが髑髏城の七人にきちんと集約することだと思う。…うん、なんか何言ってるかよくわかんないな。なんだろう、髑髏城っていう世界はとっても広くて、その世界線上に生まれるたくさんの物語のなかから、今回はこれを見せるよ、ってしてもらってるのが、今回のこの花鳥風月シリーズなのかなぁって思う。

もともとワカを見てて、森山未來早乙女太一の天蘭が大好きって私は、そりゃあもう今回のシリーズでは鳥が好き。どう足掻いたって鳥。物凄い好き。でも、ワカと違うのは、鳥という作品そのもの、座組ぜーんぶまとめて出来上がった、あのとんでも飛び道具だらけのエネルギー大放出のお祭りだぜーーー!ってザ☆新感線な舞台が大好きだったということ。しかもあんなにエネルギッシュで派手な作りなのに、ストーリー展開が今回のシリーズ1、えぐい。もうたまらない。ヲタクそういうのたまらない。よくもまぁ、あんなに通ったなぁと思うけど、何度行ってもあの抜群の安定感から何飛び出してくるか分かんないびっくり箱なのが本当に楽しかった。

で、なんで下弦が好きなんだろ?に繋がるのは、下弦も抜群の安定感があった、っていうところなんだと思うんだよね。そしてそこに乗るキャラクターが本当に魅力的で、バランスが最高に心地良かったこと。鳥の人外モンスター・化け物コンビの天蘭に、小さな体で全く引けを取らない捨之介っていうのは本当に凄かったと思うんだけど、下弦は、鳥に比べるともっとずっと捨天蘭がフラットで、でも絶対的に捨之介の話で、捨之介と天魔王の対比の話だった。ストーリーとして凄く分かりやすくて、絶妙に上乗せされていく色んなことの匙加減が完璧だったなと思う。初日の絶賛っぷりから、千秋楽、捨天蘭で見得切って終幕するところまで、求められていること全部に応えて、更にそれ以上をっていう熱量が感じられたところに惹かれたんだろうなぁ。

 

  •  捨之介

そんな下弦チームの真ん中にいて、まさに太陽だった人。なんなら登場シーン一言目の「いけねぇなぁ」で毎回イケボーーー!ってなってたし、この時点で百点満点ーーー!だったんだけど、そのあとも本筋はかっこよく、小ネタは軽快に、テンポが良くて間合いが抜群だったなぁと思う。明るくて気さくなあんちゃんで、お兄ちゃんぶりたい捨之介。この捨之介が大好きだったんだー。普段主人公を好きになることってほとんどないんだけど、久しぶりにハマった。後半にかけてぼろっぼろになっていくし、それは捨之介のとんでも傲慢思考のせいなんだけど、その想いが純粋であるがゆえにヒーローとしての存在を許されている。だって天も蘭も大好きなんだよ、この捨之介。泣いて、立ち上がって、やっと光を見つける。光には、必ず影があることを知る。そんな捨之介の物語。知る、っていうか実感する、かな。殿のもとにいたころも、そのあとの八年間も、血生臭いところにはほとんどいなかったんじゃないかなぁと思うんだよね。ただ、市井とか所謂たくさん人の居るところとか集落のなかには紛れ込んでいたから、世の中がそう綺麗ごとばかりでうまくいくとは思ってない。思ってないけど、自分の周りには出来るだけ綺麗ごとのなかにいて欲しいと思ってるんだろうなぁって感じた。

 

  • 天魔王

中の人の話で申し訳ないんだけど、今回1番予想外で凄いな!?ってなった人、鈴木拡樹。三蔵と荒北さんは見たことあったけど、一幕オープニング、まさかこんなに一気に持っていくのか…!?って衝撃でしかなかった。そして顔がうるさい。物凄いうるさい。でも1番うるさかった12月終わりから、1月でちょっと大人しくなったよね?って思ってる。いや、十分顔芸でしたけども。…違う、そこじゃない。そこじゃないのに、まず顔がうるさいって言いたくなる顔芸の凄さだったんだよ。なんだよ、あれ。でも本当に凄いのはそんな顔のうるささだったのに、この天魔王、物凄いクレバーだぞ…!という解釈をぶっこんできたところ。凄い。だんだん凄いがゲシュタルト崩壊してきた。とにかくこれまで見たことなかった天魔王なのに、これが王道だ!悪役だ!めちゃくちゃかっこいい悪役だ!っていう天魔王様。凄い。一旦休憩。

初回見たときから抜群の安定感で、でも思い返してみると12月と2月では結構違うんだよなぁと思うから、グラデーションのようにその見せ方を変えてきてたのかな。最初のころのほうが悪役感満載で、それに徹しているって感じだったのが、2月はもちろん悪役なんだけど、そこに感情が乗ってきたというか。天魔の御霊としての天魔王(冷徹な党首)と人の男であったものの感情の濃淡かなぁ。土台に頭の良さがあるから、どう見せててもクレバーであるという芯はぶれない。あのクレバーさが本当に好きだった。

この天魔王は、殿の政治の顔というか、野心をもって人をまとめて動かして、世の中を作り上げていく、その姿が好きだったんだろうなぁと思う。だから、明智を唆したのも、本当はこれを殿がどう切り抜けるか?ってところを期待してたのに、陥落するわ、最期は蘭のことばっかりだわで、物凄い幻滅したんだろうね。だからこそ、人が最も天に近づいた場所へ、その象徴である天魔の鎧を取りに行く。「これで今日から俺が、…いや、私が、第六天魔王だ」自分が成り代わってやろう、と思うのに、悲しきかな、クレバーであるこの天魔王は、自分でその器ではない、ということに途中で気付いてしまったんじゃないかな、と思う。「天魔王として、死ぬがいい」前楽日のマチネで、この、天魔王、を明るめの声色で聞かされたとき、この名を捨てられる喜びを感じてしまって、わぁぁぁ…!ってなったし、でもたぶん、人の男にとってはこれが幸せだったんだと思うと、二段階目のわぁぁぁぁぁ…!がきて、最後の最後にとんでもないもの落とされた、と思ったわ。

ちなみに台詞の頭に「huh…」「Ah…?」みたいな感じでちょっと欧米っぽい感嘆詞がつくのがとても好きでした。コミカル天魔王様!

 

  • 蘭兵衛

私の下弦の始まりの人。この蘭兵衛さん、物凄く顔が好みだな…?と思ったのが運のツキ。さくっと取ったチケットは、まさかのスクリーントラブルで公演中止となる。んあ!?…そう、あったあった、公演中止。行きの電車で知って、まじかよ…!ってなって帰ったわ。もう1回取り直して、結局中止の日から1週間後に見たのかな。ほんと終わった今ではイベントごと全部下弦だったね!だけど、だいたいのアクシデントとトラブルも下弦からだったからな!(スクリーン映らないとか鬘取れるとかキャスト代演とか)

それは置いといて、蘭兵衛さんの話。えと、顔が無茶苦茶好きなんです。本当それに尽きる。もともと蘭ヲタクなのに、顔が好きな蘭とか破壊力強すぎた。しかもこの蘭、殿からの寵愛に自覚ありすぎ。本当タチ悪かった。褒めてる。実はオーソドックスだろうに、髑髏城の世界線でこの蘭の解釈は結構斬新だったよね。うん、だからといって一幕のほわほわ可愛いから、二幕のてんこ盛り全部乗せみたいなの本当にとんでもなかったからな!?下弦で一番好き勝手してた人、だと思うんだけど、だいたいあの全部乗せみたいな仕草とかほぼ序盤からやってるの凄いし、上弦にいたら普通に安定感の人であっただろうというのも凄い。

蘭としては、終始無自覚に蘭丸だったんだろうなぁ、と思う。無界屋蘭兵衛っていう薄布は被っていたけど、殿と離れたところから子どものまま成長していない蘭。太夫はそんな蘭に成長してほしいというか、殿のそば以外にも世界はあるんだよ、って教えたくて無界屋の主人という役割を与えたんじゃないかな、と思うんだけど、何せほっとけなくて守りたくなっちゃうタイプだから、商いの主としての自覚はあんまりなさそう。居場所として無界は居心地良かったんだろうけど、ここが唯一の大事な場所とはあんまり思ってなさそうだし、ある意味どこでも生きて行けそうに見えるこの蘭が、たまたま太夫たちに拾われたからそのまま一緒にいた、って感じ。だから一番大事な殿、それに関わる戦、髑髏城、天魔王って自分の興味のあるものに走ってっちゃうし、太夫はそれを悟っているからこそ、自分が引き止めたかったけれど、それにはなれない、ならば好きように生きて、でも本当は死んで欲しくなんてないんだよ、と歌う。好き勝手してた蘭が、最後の最期「所詮、外道だ」というのは、やっとそこで太夫の思いにほんの少しだけ気付いたのかな、と思う。酷いねぇ、最低だね。蘭の話するとどう廻っても最後にここにくる。一幕の太夫とじゃれあうようにほわほわ可愛いのも、男の子!な顔して太夫抱きしめるのも大好きだけど、二幕無界襲撃ラストで無界を見上げたあと嗤うところが結果一番好きだったかなぁ。

 

  • 兵庫

リア恋枠。こんなに好きな兵庫は他にはいない。

本当これでまとめていいくらいなんだけど、私的下弦MVPだしもう少し書いておこう。何より男らしくて、兄貴が前面に出てるこの兵庫が大好き。安定感抜群の下弦チームのなかでも、本当にブレがなかった。だけど熱量はずーっと右肩上がりで、回を重ねるごとに完璧が塗り替えられた、とでも言うべきか。だってあのブレなさって、本当に凄いと思うんだよ。捨とか蘭とか、霧丸も太夫も、あ、こここないだと違う、とか、ここめっちゃ良くなってる…!とか変わってるところが必ずあるなかで、その周りの変化に合わせながら、自分は変えたことを気付かせないんだもん。絶対変わってるはずなのに、あたかも変わってないように見せるスキルの高さ。とんでもないなって思う。木村了、本当に凄い。

二幕の無界襲撃あとの霧丸に言う「おめぇ、面付きが変わったよ」からの台詞が大っ好き。「…あいつらに、笑われる」の緩急に毎回ほんとに痺れた。太夫に言う「だったら、太夫の命は俺が守る!」も本当にかっこいいしさー。どうしても蘭に引っ張られる蘭ヲタクだからそっちの話ばっかりになっちゃうんだけど、兵庫の視点からみる二幕後半って本当皮肉なんだなって改めて思わされた。思わされたというか、気付かされた、かな。それだけ兵庫を見てたんだなぁ。蘭のこと、どう思ってる兵庫だったんだろう。蘭から兵庫はすごい単純なのに、兵庫から蘭って物凄い複雑。特に下弦は年の差なさそうなのに、圧倒的に蘭が子どもで兵庫が大人だし、仲良さそうな気配もあんまりみえなかったし。天魔王とはほとんど絡みがないからそのまま敵認識でいいと思うんだけど、捨蘭に関しては霧丸とか太夫を通してみてる感じかなぁ。太夫を想うから、無界を想うし、それは蘭なんかよりずっと大きいものだったように感じた。自分の大事なものがしっかり分かってて、それに対して全力を尽くせるかっこいい人。

 

  • 霧丸

あんたが希望だ、大正義!唯一無二の光の強さで、その影に何があるかを知っているからこそ、みんなを救う。大好きだったー。前を向いてからの突っ走る力強さったらなかった。

正直最初は印象が薄くて、えっらい動ける子だなぁ…くらいだったんだけど、12月終わりに見たとき、この子、実はめっちゃ顔整ってて綺麗だな?っていうのと、霧丸って実は可愛い…?ってことに気付いたのが今思えばフラグってやつで。1月に続けて同じ席で観るっていう偶然があったんだけど、そのときに霧丸の熱量がめちゃくちゃ上がって、お芝居が物凄く良くなってるのを感じて、待って待ってこの子凄いぞ!?とんでもないぞ!?で、すってんころりん。ものすごい追ってみるようになった。

はじめは髑髏城の七人が沙霧/霧丸の成長物語だ、って言われてる意味が全然分かんなくて、そんなに重要かなって思ってたんだけど、沙霧/霧丸のポジションがストーリーテラーとして引っ張ってくれるとこんなに話の説得力があがるのか…!って体感したときにこのシリーズにハマったのかなと思う。この霧丸は、熊木の長としてきちっとたってて、だからこそ自分が逃がされて、逃げる意味も分かってるんだけど、仲間を犠牲にしたことが本当に悔しかったんだろうなと思う。天魔王に復讐したいのは怒りを持ってるから。でも捨之介に諭されて、自分の出来ること、すべきこと、したいことに気付いていく。二幕の後半、本当に面付きが変わったようにみえるのが凄かったな。目の強さが全く違うんだよね。前を向いた力強さがみんなを奮い立たせるし、絶対に捨之介を死なせたりしないって誓ってる。だけどきちんと現実も知ってるから、家康に仮面を差し出すとき、強い強い目をしながら、懇願する。あのシーンで、あの目から懇願を感じたときに、ここまで全部乗せてくるか…!って震えたよ。絶対に泣かないけど、泣きそうな目。安心してへたり込んで、捨之介に縋り付きに行くの、本当好きだったな。捨之介を、みんなを救ってくれてありがとう。

 

あとは雑感。

千葉二郎衛門は髑髏城世界で一番好き。粟根渡京を鳥でしか見てない私にとって伊達渡京は実ははじめっから物凄い好みで、あの柳のような裏切りがたまんなかった。きゃぴきゃぴ可愛い羽野太夫には毎回ほんとに度肝抜かれてたなぁ。お姉さんガールズたちに、イケメンな荒武者隊に、いつでもかっこいいアクションチームに、この下弦の世界を作り上げて、見せてもらって、本当に楽しい3ヶ月でした。