髑髏城の七人Season鳥

二幕

 

 

 

  • 髑髏城 玉座の間

とりあえずまずこれを言っておかなくてはいけない。目の前で、13000円払って一場面やってくれるっていったら間違いなくここ!…よし。

 

スクリーンが開いて、髑髏城内玉座の間。真ん中の金色の玉座に座る天魔王。坐禅のような座り方?で、腕は左右に広げて膝の上に乗せて中指を立てたポーズ。高い位置のポニーテール、ゴールドベースで洋風のお召しもの、めっっっちゃ好き。首元レースというか、中世ヨーロッパ風の高襟?がよくお似合いです、天魔王様。下は袴っぽい感じで、動いたときのシルエットが抜群に綺麗。広がり方がたまらん。そして御伽衆が…7人?8人?くらい。男女比どっちが多かったんだろ。黒に赤と白?のポイントラインが入った衣装で、目元は仮面みたいに黒で覆われてて怪しさ満点。

生駒に連れられて下手から蘭兵衛登場。部屋のなかをぐるりと見渡して、場所の把握をしてる。たまにやたらキョロキョロしてるときもあったな。

人とは、悲しいなぁ、蘭兵衛」

天魔王の台詞のなかでもキーになる「悲しい(哀しい)」一幕の登場のときはさらりと流したこの言葉が、二幕はどんどん降り積もってくる。

 

「生駒」と呼びつけて、秀吉軍の動きの説明。なんでそんなノリノリのラップ調なの…!?ココガドクロジョー!ココガオダワラジョー!しかも縦ノリ、動きが激しい。イシガキヤマダァでは2人してチェケラーのポーズ。キミたちのキャラがワカラナイ。7月中旬くらいから、生駒がものすごい棒読みの「Ah-Hah」を入れるようになって、8月に入ると生駒に歌わせるバージョンに進化。どういうこと…!?最終的に「ぃよぉぉぉぉおおお!」と能のような声を天魔王があげ、生駒が歌う→天魔王がリフレイン→イシガキヤマダァのヤマダァにセルフエコーをかけてフェードアウトしていく、という仕様になりました。そして最後は天魔王がパッと階段を駆け上がり、生駒とパチーン!とハイタッチ。ご満足そうで何よりです。何よりそれを無表情に見つめる蘭兵衛さんには色んな意味で尊敬の眼差しを。最後のころは呆れた表情のときもあって、昔もそういう立ち位置でした?ってなりました。少なくとも蘭兵衛にとって天魔王は自分より下の者なんだろうなぁ。

 

「お、おぉ↑うさかをぉ~たぁたぁくぅ〜(扇子パシン)」とか「ジパーング‼︎」とか一幕とすらキャラ違うね?ハイテンションだね?って天魔王は本当に百面相のよう。黄金の国…で地球儀を回し始めるの、最初見たときは間違えていっぱい回しちゃったの?と思ったんだけど、まさかの仕様でした。いやぁ、良い勢いで回してたね!あの溜めてるところで客席がクスクスし始めるのがおかしくて、ジパーング‼︎で扇子使ってビシッとされると笑っちゃうのに「エゲレスだと?」で空気戻す蘭兵衛はさすがでした。地球儀、何回か指しに行こうとして「あ、いけない…!」って戻す天魔王様お茶目。「毛利も、上杉も」って一段ずつ階段登ってく横歩きに合わせた首の動きが好き。変。

「ワクワクするよなぁ?なぁ、蘭丸?」「やめろ!」

ここのワクワクするよなぁ?も「ワァクワァクするよナァ?」くらいわざとらしく、そして首と手の動きがね、もう最終的に気持ち悪くなってたよね!(褒めてる)

 

「今日はそんな話をしに来たわけじゃない」と言う蘭兵衛に対してずっとにやりとしてた表情をスッと消して「あ、そうか」ってテンションをストンと落とす天魔王。最後のほう、ここの言葉尻結構遊んでたね。めっちゃ軽い。

 「鉄砲三百丁」玉座の置いてある段に足をかけて言い放つ蘭兵衛。1回だけ、手を鉄砲の形にして天魔王に向けてたのを見たかな。親指、人差し指、中指って伸ばしてて、三百も表してるのかなぁ、と思った。そのあと、階段を下りて客席に背中を向けて天魔王に対して礼をするように屈む。着物の上掛けが少しふわっとなるのが好きだったなぁ。天魔王は生駒から手渡された夢見酒を一口飲んで「お前と私の仲だ、嘘はやめよう」軽かったところから少し重めの話し口。これだけの緩急をつけてるのに、それを1人のキャラクターのなかに成立させてしまうのが本当に凄い。そしてまた嫌ったらしくにやりとしながら「私を殺すために」ここにかぶる音楽の低音のイントロがめっちゃくちゃ好き…!紫の照明が入って、禍々しい映像も重なって、くるぞくるぞ…!って高揚感。もはや伝説といってやりたい、口説きの開演。

 

最初はね、ここで歌うの!?って思ったんだけど、見てるうちにむしろこんな切り口でこのシーン出来るのか…!って驚きが優った。で、驚いてるうちに引き込まれて、引きずり込まれて、どぼんとハマった。歌って、踊って、立ち回るの共存。コン殺陣ンポラリー。素晴らしい。階段駆け上がって刀抜き放つ蘭兵衛。階段跳び降りる天魔王。御伽衆も動き出す。全部が全員の身体能力の高さがなせる技だった。流れ的には所謂これまでの口説きの台詞が全部歌詞にのっていくんだけど、天魔王だけじゃなく、生駒にも歌わせた演出が本当天才…!ガンガン刀を合わせていく天魔王と蘭兵衛に、蠢くように取り巻く御伽衆。そのなかをゆったりと動き、歌い上げる生駒の存在感たるや。

 

蘭兵衛は日によって、たぶん見る角度にもよって、堕ちていく様子が違ってみえた。最初のほうから呼吸も髪も乱れて、喘ぐようなときあり(あれ、えろかった…)、堕ちそうだけど、戻ってきて、葛藤してるときあり(これが多かったかな)、最後までぎりぎり一線保っているときあり。 同じなのは、殿の仮面を見せられたときに堕ちること。

「この面に見覚えはないか?」「まさか、それは…!」「イグザクトリィ!」

このあとの客席を振り返って必死になって言う「殿は生きろと言ったのだ。私に、どこまでも生き延びろと…!」が大好き。あの紫にオレンジがかかった照明もめっちゃ良かった。ここでたぶん初めて「私」を使うんだよね、蘭兵衛さん。蘭丸の一人称は「私」だったんだろうな。ここで、まず蘭丸へ天秤が傾く。

 

天魔王が立膝ついたような姿勢で蘭兵衛を横抱き、生駒が寄り添いながら殿の仮面をパペットのようにして、蘭兵衛に言う「生きろ」、天魔王に「死ね」。

♪~死んで蘇れと 己の遺志を継ぐ 天魔の御霊として~♪

そう、死んで蘇れと言われるのは本当は天魔王なんだけど、まさかこの蘭兵衛さんが天魔王としてもう1度生きることになるなんてね、鳥が始まったときには思いもしてなかったよね…。死んで蘇ったぁぁぁぁぁ。ただ、この天魔の御霊として蘇れ、は天魔王の創作なんだろうなぁ、と思う。光秀を唆したのは猿、だって嘘だしね。「死ね」と言われたのは本当かな、どうかな。殿が本当に天魔王に「死ね」と言って、それが一緒にここで死ね、という意味なら、むしろそれは蘭兵衛にとったら羨ましい、天魔王が蘭兵衛を憎むのと同じくらい憎くて憎くて羨ましい発言だよね。一緒にいたい、一緒に逝きたい。 仮面出されてから、蘭兵衛は仮面しか見てない。天魔王のことなんて、全く見ない。

 

♪~だが 私を殺せば~♪のところ、天魔王が人差し指を立てて動かすのが蘭兵衛を惑わせていくのを象徴するようで好きだった。にやにやしながら気持ち悪いの(褒めてます)。蘭兵衛の刀を指で辿るのはどこだったかな。♪~お前か?お前が成すか~♪のとこか、♪~さぁ その剣でこの胸を 貫け~♪のとこ?あれも好きだったんだよね。あそこだってもう一太刀で蘭兵衛は天魔王のこと斬れるだろうに、斬れない。天魔王は殿を引き合いに出して蘭丸に堕ちた蘭兵衛が、もう自分を斬れないことを分かってる。人心を掴む…この設定うまいよなぁ。

 

♪~殿が叫んでいる お前とひとつになりたいと~♪

ここ、最初に聞いたとき、この蘭兵衛さん絶対殿に抱かれてる…!って思ってすみませんでした。…でも、思うよね?だってその前に♪~蘭丸 殿が最も愛したお前と~♪とか言われてんだよ?蘭兵衛は全く自覚なさそうだったけど。周りは全員殿が蘭丸を溺愛してることを分かってるのに、本人だけは分かってなくて、なんなら好きなのは自分だけだ、と思って、でもそれに満足しちゃうタイプでしょ。最も愛したお前、で嬉しそうに縋りつきたくて歪む顔好きだったなぁ。♪~殿が叫んでいる~♪のあたり、蘭兵衛は御伽衆にリフトされてて、あののけぞるように動くのが美しくてね…何かを見て、美しいなんて単語がいの一番に出てきたのは初めての体験だったよね…美しい…。天魔王の側転も綺麗だったなぁ。何回目かで初めて見れたんですけど、えぇ。だってもう目が蘭しか追ってくれないから…! 

 

天魔王が立ってて、蘭兵衛がそれをお姉さん座りのようになって床に前のめりに手をついて見上げてる構図も好き。蘭兵衛は天魔王の持った仮面しか見てない。

♪~さぁ この手を取れ 私を受け入れろ~♪ 出された手なんて、もちろん見てない。

♪~お前と私で 蘇らせる 殿の想いを 殿の夢を~♪

ここも横抱きっぽくされてたよね、蘭兵衛。あの2人もたまらないよね。もうめちゃくちゃ良いよね、あの姿ね(落ち着けない)。

蘭兵衛は両手で受け取った殿の仮面を、自分の顔につけて離せない。最初のころは仮面を撫でるように触ってたことがあって、あれは絶対に自分がそういう風に殿に触れられてたんだろうな、と思ってたんだけど抱くように離せないほうで固定になったのが7月上旬かな?最後のころは、あぁ、やっと殿と会えたんだな…って思ってしまったほどそこに蘭兵衛の殿への気持ちが見えて、切なくて苦しくなった。

 

夢見酒口移しに関しては、なんか今日長くない…!?って日がたまにあって、というか、今、自分から口づけにいきました…!?って日もあって、天魔王の頭をガッと掴んで足じたばた…たまにもだもだ、に見えた日もあって、何が言いたいかと言うと、全力でありがとうございました!ごちそうさまです!!

天魔王を引き剥がした蘭兵衛が、ドンッという音とともに玉座前へ。照明が暗めになって、シルエットが壁に映るようなスポット。つーっとまず流す一筋の血のなんて綺麗なこと!!!そして笑うように口元を歪ませて、どばぁっと今度は一気に。後半はこのへんから、笑うが、嗤う、でもあって本当に怖かった。全く蘭兵衛を見ずに天魔王が差し出す杯を奪うように受け取る蘭兵衛。仮面を見ながら、掲げながら、一気に飲み干す。このときの背中の反りっぷりも凄い日があったね…。あのシルエット映す演出も大好きでした。立ち姿だけなのに綺麗という魅力が存分に発揮されている…。

 

蘭兵衛に杯を渡すときからの天魔王もめちゃくちゃ怖い。にやりとした表情なんだけど、ここまでとは違う、怖いにやりとした表情で、堕ちたな、って思っていることが分かる。手筈通り。なんなら、簡単だった、と。ここから、驚くくらい蘭兵衛を見ないんだよね。ここまではむしろ、ずっと見ているのに。「見事だ」から、沙霧を見つけ出して、またわざとらしい外国人かぶれな話し方に。正直ここの天魔王と沙霧の記憶が薄いのは蘭兵衛しか見てないからだと思う。

 

玉座に座り込んだ蘭兵衛は、はじめのころどうしてたんだっけ…。というか、血糊メイクっていつから始まったんだろう。気付いたら本日の血糊メイクレポがあがるようになっててどこのヲタクもやること一緒よね…素敵よね…って見てたんだけど、自分ではっきり見れたのはライビュのときが初めてだったもんなぁ。あのときは指で描いてるころで、マチネが下瞼についてる感じで、ソワレが目頭と目尻から涙のように伝ってたんだっけな…。どちらも左目。ぜひソワレのほうで円盤化してくださいね!!!と思った記憶。8月中旬くらいから杯に1回吐き戻して?杯を直接目元にあてて流してた。これはめちゃくちゃ綺麗に一筋流れてるのとか、目の中まで真っ赤になってるのを見たかな。7月中旬くらいまでは日によって右目にしてることもあったんだけど、そのあとはいつも左目にしてた。本当に綺麗で、本当に怖かった。終盤は口元もてらてらしてたから余計に怖かったな。

 

沙霧に助けを求められて答える「誰だ?それは」の声の低さ。

「森、蘭丸」「黄泉の国から舞い戻った天魔の怨霊だ」

血の涙を流し、口から血を吐き続け、白い着物が赤く染まる。堕ちちゃった。たまに着物が凄くはだけてることがあって、首元・胸元も真っ赤だったね。そしてこのへんからずーっと数珠を触ってる。天魔王が嗤うんだよね。「モリランマル、蘇りぃのうたぁ~げ」杯を受け取り、刀を渡す。蘭兵衛がふらふらとしながら沙霧を斬りつけようとしているあいだ、天魔王は受け取った杯のにおいを嗅いで「うぇぇ」と嫌な顔をする。自分が飲んでたのと、蘭兵衛に飲ませたのは別物なんだよね。蘭兵衛に対して明確に薬を使った、という表現はないけど、ここの天魔王を見る限りやっぱり薬を飲ませてるのかな。だから、蘭兵衛はふらふらとしてるのかな。ちなみに天魔王様、このあと御伽衆の女の子に襲い掛かって(あれ、襲ってるよね?)もしゃもしゃ、わしゃわしゃと遊ぶ。遊ぶか、この流れで!と思うけど、遊ぶ。もう蘭兵衛堕ちたもんね…そりゃ、そこに興味なくなるよね…。

 

「よーくわかった!」沙霧が強い子で本当に良い。

玉座に腰かけた天魔王。その左隣にストンと腰を落とす蘭兵衛。ここの蘭兵衛がまたまずくて、最初のころはお姉さん座りをして右手で刀にもたれかかってる、っていうのがデフォルトで、そのフォルムですら、やばい…!ってなっていたにも関わらず。関わらず、ですよ。そこから刀にもたれて、更にしなだれる。刀にもたれてから、ふらーっと玉座のほうに寝転び、数珠を持ち上げて見つめる。足が階段のほうに投げ出されたまま、刀にもたれる。刀にもたれたまま、沙霧のほうを見て、でももう関係ない、と視線を逸らす。両手で刀にもたれて頭もぐーっと下のほうに落とす。ぐーっと頭を下げてから、フと虚ろな目をして顔を上げる。もたれていた刀をすとんと下の段に落として床に倒れそうになる。なんていう思い出せるだけでもこれだけのバリエーションをつけてきてですね。だからね、や ば い ん だ っ て …!(語彙力)玉座しなだれバージョンが1番好きだったんだけど、そのなかでも天魔王の座り方でまた見え方が違うのがさぁ…!天魔王が蘭兵衛とは逆側にもたれてるときは、冷徹な目で見下ろすのが見えたり、蘭兵衛側にもたれてるときは背中合わせみたいになっててそれもめっちゃ好きで…!最後に観に行ったときがこの蘭兵衛の座り込んでるところの直線上だったんだけど、そのときは右手で刀にもたれてから1度頭をふらーっと下げてね。頭を上げときの表情が、目は真っ赤すぎて黒く見えて、口元もてらてらしててそれはそれは物凄い怖かったんだけど、真ん中あたりから涙が一筋流れてて、物凄い怖いのに、でも、あの血の涙は本当に泣いてて、あぁ、壊れちゃう…この子壊れちゃうよ…って思って、ぎゅーって苦しくなった。

 

沙霧が逃げ出したあと、天魔王に「奥の間で軍議を」って言われて動く蘭兵衛は後半になるにつれてふらふらとする足取りが顕著になった。ここは、ふらふらしてるほうが好きかな。エゲレスからの手紙がきて、天魔王に「先に」と言われて振り向く蘭兵衛はふらふらしてないときはコケッとしてるように見えたけど、ふらついてるときは少し沈み込んで振り返るように見えて、どっちが正解だったんだろ?や、コケッとしてるほう、なぜそうなる?って思ってたけど。お茶目か。「ああ」って返事をするときに口元が笑ってるように見えたときもあって、あれも怖かったな…。天魔王が1回だけ「後から行くから!」ってやたら軽く言ったときがあったり、手紙をバッと一発で開けなかったときがあったり。手紙に目を通して「何!?」って言うまでが早すぎない?と思ってたけど、去った蘭兵衛のほうを見て「これも、天の定めか…」と哀しそうに嗤う。十字を切るような仕草は、ここの蘭兵衛と最後の捨之介にしかしなくなって、天魔王にとっても、この2人は良い意味ではないだろうけど特別だったのかなと思う。ここの天には、そもそもの天(神)と天(殿)がかかってるのかなぁ。天魔王は殿に向かって堕ちた蘭兵衛を神が見放した、と思って皮肉に笑うのかなって感じたんだけど、どうだろう。蘭兵衛が殿の側に堕ちるのは殿に仕え、愛し愛されたものとしての定めであって、でも神の定めとしてはエゲレスは来ない、この場で戦をする必要はなくなった、とすると、天魔王はこの時点で城を捨てることを決めているし、蘭兵衛も必要ない。けれど天=殿のもとに来た、来られた、と思ってる蘭兵衛にとってはものすごい皮肉だし、見放されてるんだよ、と思うのはある意味快感。天魔王、あの手この手を使うけど、蘭兵衛のことはずっと駒だと思ってるし、弄びたいのかな。こっちにおいで、絶望に突き落としてあげる。

 

  • 髑髏城内

スクリーンが閉じて、逃げる沙霧を追う鉄機兵。ぜぇぜぇ言いながら追いかける角丸さんはもはやコント。後半ここめっちゃ遊んでた。鉄機兵に「おぶえ!」って要求してみたり、「角丸様に続けー!おい、続けって言ってるだろ、追い越すな!」って文句つけたり、「藤家ー‼︎」ってたまに藤家さんは個人呼び。何したの?鉄機兵の槍奪って振り回してみたり、投げつけたり、地団駄踏んだり。壁に爪痕つけて「あー‼︎」たまに「天魔王様に怒られる…!」一幕でも思ったけど、どんだけ天魔王怒らせてんのよ、角丸さん。懲りてないな?

「冗談じゃない‼︎」逃げ続けながら、これを言える沙霧、本当強い子。爪月に見つかって言われる台詞がさ、「こんなところで死にはしない。そういう強い目をしている」「そんなやつを殺すのが、わしゃあ大好きじゃ!」なんだけど。本当に本当に申し訳ないんだけど、最初見たときからずっとずっとあずみ…!美女丸さん…!って思っていたことをここに白状します。10年以上も前の舞台の台詞覚えてた自分にひいたよ…。大好きだったんだよ。

沙霧が爪月に斬られそうになるところで暗転。
「およ?真っ暗になっちゃったじょー!?」
歌声が聞こえ始めて、パッとスポットの照明が当たったところには捨之介!爪月にぺこりとお辞儀をし、南蛮あたりの鳴り物で攻撃開始。「いたっ!?」3回くらいスポットが当たるたびにポーズを決めて、そのあとは暗転したまま殴打する音と声だけ聞こえてくる。爪月さんは下手にハケながら声入れ。倉庫にある段差に腰掛けながら歌う捨之介にぼんやりとしたオレンジの照明が当たる。♪〜希望と 呼べばいい〜♪鳴り物の弦ぱちんぱちん。物陰からこっそりと入ってくる沙霧と再会。
「無界に戻ったらお前も蘭兵衛もいないから、まさかと思ってな」「無事で良かった」
このとき、背中の刀に両腕を回してるポーズが好き。

斬りつけられたとき、はじめは「どうした!?」って慌てるのに、沙霧が必死になって言う理由を聞くと、蘭兵衛には「あのバカ!」と言い、沙霧に対しては静かに自分を差し出すようなことをする。でもあれ、本当に黙って斬られるつもりがある、っていうよりは激昂してる沙霧には静かな顔をしたほうが手を止めるんじゃないかと計算して座って目を閉じたんじゃないかな、と思った。あんな真っさらに出されたら、逆に何にも出来ない。沙霧は熊木衆を天魔王に教えて滅ぼすきっかけを作った捨之介じゃなくて、そばに居てくれた捨之介を思い出すんじゃないかな。「なんなんだ」「もう、何がなんだか…」だから、混乱する。だけど、激昂してたところからは落ち着くし、賢い強い子だから、こうなれば話を聞く。捨之介はここを待ってたのかな。沙霧のことよく見てる。

最初から最後までいまいちここの話のくだりに納得いかなかったんだよなぁ。捨之介の殿に対する窓口は天魔王。けれど光秀謀反の知らせは蘭兵衛に届けようとする。つまりこの時点で捨之介は天魔王の関与を知っていて、だから蘭兵衛に知らせようとする、と考える。天魔王は蘭兵衛、ひいては殿に光秀謀反を知られないように捨之介を足止めするために手下の野武士に村を襲わせる。そうすると、天魔王は光秀に謀反を起こさせることを捨之介に知られていること知っている状態だったの…?それなら村襲わせるなんてまどろっこしいことするより捨之介自身に刺客放ったほうがよっぽど都合良くない?と思うんだけど、それをするには捨之介が強すぎたということ…?捨之介がこの時点で光秀謀反は知ってても天魔王関与を知らないんならあとから調べてあの村の襲撃はそういうことか、って思うのかもしれないけど、だったら蘭兵衛じゃなくて、天魔王に知らせようとするよね?と思うし。それにここ、沙霧が天魔王の手下だったんじゃ?って言うんだよなぁ。あれもとても違和感。なぜこの流れでそれが分かる?遡れば蘭兵衛が捨之介が間に合わなかったことを知ってるのに天魔王の関与を知らなそうなところもよく分からない…。蘭兵衛さん、何でそんな半分だけ知ってんのよ…。アンタそんな中途半端な知り方してるから堕ちるのよ…。

髑髏党に見つかって、ここから明確に沙霧を庇いながら立ち回る捨之介。沙霧も背中合わせのように剣を構えるのが大好き。守られるだけじゃない。「先に行け」なんて言われたほうはたまったもんじゃないけど、「太夫たちに知らせろ」「蘭兵衛が寝返っちゃ無界も危ねぇ」って沙霧に理由を与えるのも上手いなぁ、と思う。短い、短い時間しか関わってないけど、この2人にとっても無界は救いの里、守るべき場所になってるんだなぁって説得力がある。

渡京が現れて言う「お前はあのときの爆弾馬鹿!」に、そういえば捨之介と渡京ってオープニングからここまで同じシーンないんだよなぁって気付く。
「ちゃんと喋れるんじゃないか!」「そんなことはどうでもいい!」
ここらへんの捨之介の立ち回りがめっちゃかっこいいんだよね。そして台詞回しも大好き。渡京をお前呼ばわりする髑髏党に対して「ほーら、見ろ!こいつらお前の名前さえ覚えちゃいない!」「こんなやつらに明日が見えるか!」渡京は、名前を大事にしてるのかな、と思う。何度も自分の名前を言う。それなのに髑髏党の幹部は全く覚えてくれなくて、功績だって立ててるはずなのに、そこのお前呼ばわり。だから捨之介がすぐに名前を呼んだことって大きいのかな、と思う。
「惜っしいなぁ、もうちょっとなんだけどなぁ」「その裏切りの血を裏切ってみな!」「気持ち良いぞぉ〜!」「裏切り渡京さんよぉ?」ここの手すりにもたれてる捨之介大好き!
沙霧も、何度も裏切られてるはずの女の子も、渡京の名前を呼ぶ。「ここで裏切れば十中八九、死ぬことになる」「それはどうかな?」捨之介には勝算がある。髑髏城を熟知してる沙霧と、自分の命が1番大事、生き延びるためなら何でもする渡京なら雑魚の鉄機兵からなんて逃げられる。「来い、沙霧!」「行け、沙霧!」ここ、2人が沙霧!って名前を呼ぶの凄く好き。沙霧の行動が物語を牽引していく。

沙霧と渡京を逃して、楽々と髑髏党を倒した捨之介。「あーばよ!」パァン‼︎ 響く銃声。この前で倉庫のあるセットから玉座の間のセットに動いていて、玉座をなくして下手に階段設置。その階段をゆっくりと下りてくる蘭兵衛。鎧なしの赤い髑髏党衣装(広がりがたまらん…!)に黒のオーガンジー羽織って髪の毛おろしてサラサラストレート…!
「蘭兵衛…!」「蘭丸だ」
ここの、ここの蘭丸が大好きなの…!銃撃つ蘭丸見れたときの感動ったらなかった。途中まで見えるのすら知らなくて、上手席きたとき、ちょー嬉しかった。お目目真っ赤のお化粧も大好き。後半になるにつれてどんどん濃くなってた気がするよ。特に左目。8月中旬くらいからかな?隈取り!?って思うほど下瞼が真っ赤になっててびっくりした。狂気。近くで見るとぽんぽんとぼかして置いてる感じなんだね?って分かるんだけど本当見る場所でも印象変わるな…!と思ったよ。蘭兵衛の印象をいい意味で広げてるし、捉われないようにしてる。
天魔王様も続いて階段上から登場。「ワッツアップ?ワッツアップ?ブロー!」だからまたそのチェケラーな手。このワッツアップ?はショーサクライ?ショーサクライなの?って思ってた。

「天魔王…!」苦々しく言う捨之介に、にやにやした天魔王。幹部に台詞取られちゃうの、後半はかなり分かりやすく被せてて面白かったな。え!?って顔したり、ほんとお茶目で笑わせてくるところが凄い。
蘭丸は階段下でずーっと数珠触ってて、話はきっとそんなに聞いてない。捨之介が一太刀ずつ幹部に斬られ始めたところで、ふわーっと動き出す。ここの対捨之介の殺陣が本当に好き。ゆっくりとした太刀筋で、一見舞のように流れる動きなのに鋭い。髪と袴がふわっと広がるシルエットが本当に綺麗で、綺麗であるからこそ残酷。
「あの方は、あの世に行くときでさえ早駆けでいってしまわれた」
数珠を縋るように持ちながら、みえるのは、一人で逝かせてしまった主人のこと。
「でも、もうそんなことはさせん。私は天と共に生きる」
この天は、天魔王じゃないんだよな。もう、いないはずの殿なんだよな。そのことが分からない蘭兵衛じゃないだろうに、殿と天と天魔王をうっすら遠くに見つめて同じものだと思いたいのかな。
「捨之介。お前には分からぬよ」
この、捨之介、の物凄い優しくて甘くて柔らかい言い方が蘭丸台詞ナンバーワンです。優勝です。お前には分からぬよ、まで物凄い柔らかいのに何も寄せ付けない。完全な自己完結。何度も見ても、はわわわわ…!ってなったし、グサリと刺される感じだった。

捨之介が倒れて、くるん、と回るように直立姿勢に戻る蘭丸の、このくるん、ふわんの動きも全部好き。ここの蘭は本当柔らかくて軽くて浮遊感があって現実感がない。
「今宵より全軍の指揮はこの蘭丸がとる」
それでも、スッとただ立っているだけなのにこの人の指揮する軍は強いんだろうな、と思わせる何かがある。
「そのものを牢へ」「生かしておくのか?」階段を上って天魔王のそばで手すりに寄りかかる蘭丸。ここの場面の2人が、1番対等のように見えた。似てるというか、感覚が近いというか。「秀吉よりも先に倒すべきものがいる。来い」そして蘭丸が天魔王に対して命令のような言葉遣いをするのはここだけなんだよね。単純に、強いなぁ…と思ってしまって、策として最善をとったんだろうな、と思う。その策を取ることでどうなるか、よりも、その策で成功した先にある秀吉軍のことしか考えていないような。軍師としての蘭丸の姿なんだろうなと思う。天魔王の返事待たずに行ってしまうし、天魔王が「えっ?」と言っても無視。「えっ?あ、あー…なるほど。面白い」天魔王様、ここの台詞も最後のほう「あらっ!?」とか入れ始めて遊んでて、危うく言い終わる前にスクリーン閉じそうになったりしてたね。天魔王は家康を倒しに行く=無界を襲撃する、を悟って、面白い、と言うのかな。蘭丸は家康の首を取る、しか考えてないのを見抜いて、それはお前、元の居場所を壊しに行くということだぞ?気付いてるか?って皮肉に面白がる。蘭丸は有能な駒だけど、もう必要ないし、ズタズタになればいいと思ってる。にやりと笑う顔が怖い。

  • 関東荒野

灯りを片手に見回りをしてる兵庫のところへ、渡京が走り込んでくる。
「ここはもう無界の里か?助かったぁー!」「渡京、てんめぇ…!」
兵庫が渡京を殴り始めたところで沙霧も駆け込んでくる。一生懸命兵庫を止める沙霧可愛い。「これでも、あたしの、命の、恩人よ!」はぁーっとため息つかんばかりに腰に手あてて立ってる沙霧は大人ってのは本当どうしようもない、とも思ってるけど、それだけじゃないところに助けられてるのをきちんと分かってるよね。
渡京の電光石火の手のひら返し!の見得切りは、兵庫が妙な見得を切るな!ってツッコミ入れるのも絶妙で毎度笑わせてもらいました。渡京のブレなさよ。

髑髏党が追い付いてきて、兵庫が倒した、と思ったところで雷鳴。
「なんだ、この怪しい雲行きは…」「美しい…刀とはまっこと美しい…」
よろよろ出てきた贋鉄斎に客席が「!!」ってなるのが見えるようだった。
上手にいる髑髏党のほうを見て「にゅ?にゅにゅにゅー?」と走り寄る贋鉄斎。「なんだこの醜い刀は!」「お前らチャバネゴキブリみたいにみにくーい!」チャバネ…!ゴキブリ…!確かに…!ってちょっと本気で納得してすみません。「そんな刀はいらぁん」と雷の力を利用した人間鉄板磁石の威力発揮!にゃー!ここの髑髏党のみなさん、取れない…!取れない…!からの取れた…!って小芝居が後半になるにつれてめっちゃ精度上がってて、取り戻した刀の確認したり、おいコイツどうする?みたいにしてたり色々追加してきてたの面白かったわぁ。もう1回人間磁石したあとの贋鉄斎の台詞は日替わりアドリブネタ。
蒸すな蒸すなと思ったら集中豪雨、さっき雨が降っててね(やっぱあれ雨の音か…って思う安普請ステアラ)、短い夏休み何してたのー?、今日遅刻した人がいまーす!、輝け髑髏党ナンバーワン!、本日は50公演目…まだ25公演あります、8月20日パンツゼロの日!(パンツネタ続いてやってた)などなど。後半になるにつれて長くなってたのはもちろん、髑髏党のみなさんのツッコミも鋭くなり、むしろ物凄い待ってみたり、敵同士のはずが仲良し面白シーンになっておりました。下手にいる沙霧、渡京、兵庫も素で笑ってたしね。全部贋鉄斎が悪い。

ネタ終わりに強制終了するかのように雷どっかーん!ばたばたと倒れる贋鉄斎と髑髏党のみなさん。「この人助けてくれたんじゃないの?」と一応贋鉄斎のことを気にする沙霧。渡京の「こういうときは、心の臓に刺激を与えれば」で客席は笑い始め、パッとスポットのあたる叩けるグッズに堪えきれなくなり、嬉々として叩き始める3人に爆笑。なんなら3人も笑いながら叩く。「親父狩りか!」贋鉄斎のオチまで最高でした。

「あんた誰だよ!」って強気で言っちゃう沙霧は本当物怖じしない。「はじめまして!(仁王立ちでぺこり)」ってする贋鉄斎に対しての態度が三者三様だったのが印象的。ふんって強気のままちょこっと頭を下げる沙霧、ピッキリッと礼をする渡京、2人を見てちょっともじもじして上目使いをするように顎を下げる兵庫。この兵庫を見ると、ちょっと弱気なところはあるけど本当はとても普通で常識のある人なんだろうなぁと思った。贋鉄斎が自己紹介を始めようとするところで鉄砲を撃つ音が聞こえてくる。真っ先に走る兵庫、追いかける渡京、「無界はこっちよ!」と贋鉄斎に声をかけながら、走り出す沙霧。「待て!まだ自己紹介が途中…」あの自己紹介が最後までなんて言ってるか分かんなくて、磁石の国からやってきた?ガラガラと荷物を引きながら贋鉄斎も無界のほうへ。スクリーンが閉じる。

  • 無界の里

音楽が鳴り始めて、上手から無界ガールズが鉄砲を肩にかけて持って登場。このときのカラフルな照明めっちゃ好きだったー。ガールズたちも衣装チェンジ。推しはピンクと水色だったかな。行進するように歩いて、銃を構える姿はかっこいい。みんな可愛くて強いね。

♪〜守るよ ここがふるさとさ〜♪

あのフォーメーションをくるくる変えながら踊るの大好き。歌い終わりに「よし、頑張ろ!」ってニコってするのも好きだー。前半はここで寄って来てる少吉に驚いて嫌な顔してたんだけど、後半は少吉が一緒におー!って言ったり、拍手したりしてるから笑っちゃったりしてて、そっちの演出のほうが好きだったな。少吉もなんか憎めなくて許されるキャラクターだよね。後半、本当良かったんだよなぁ。もともとキャラ立ちしてたけど、よりくっきりして、ふざけた合間にお父さん想いで、真面目なとこがみえた。

 

おるつ、髭剃った?の流れ。軽くいちゃもんつけてくる少吉を気にせず(「ごっつぁんです」)、「女は変わるね、男で」と言う太夫。なんとなく、少吉はそんな絡み方しか出来ないのかな、っていうのを太夫の動きから感じた。女の人を褒めるなんてしたことないから、何か言いたいんだけど、分からないから絡むようになってしまう。太夫はそれを読み取ってるのかな。

「ご飯の用意が出来ましたー!」で駆け込んでくる荒武者隊。1回だけ、ここの勢いが良すぎて盛大にお茶ひっくり返したのを目撃したんだけど「こぼしちゃった!こぼしちゃった!」ってちょー可愛かったんだよ。荒武者隊、リア充男子大学生(なんか可愛い)って感じだったな。わちゃわちゃしてな。後半、おるつに対して「髭がない!」「べっぴん?」とか日によってニュアンスが違ったと思うんだけど、台詞がオンマイクになってて良かった。前半はもっとごちゃごちゃ色々言ってたと思うんだけど聞こえなかったもんなぁ。ガールズたちは基本みんな手におにぎり持ちすぎです。前列、片手に2つ、もう片手に3つ持ってたの、おくみ?おいく?気付いたとき、欲張りすぎだろ!って思わず笑ったわ。食いしん坊か。

 

「2代目!」っておにぎり差し出すところ。ここの前、荒武者隊が入ってくるとこまでは少吉もへらへらしてるんだけどみんなが楽しそうに食べ始めるとふて腐れた顔して寝っ転がるんだよね。その輪には入れない、入りたくもない、って思ってそう。側から見ると素直になれないから、おにぎりも受け取らないし、荒武者隊のこと一発ずつ殴るようなこともするんだと思うんだけど、でも、そうなって当たり前なんだよね。お父さんである兵庫は自分のこと放っておいたくせに、無関係だったはずの場所で若い子たちに慕われたりしてて、腹立つよね。「ただのどん百姓だ。親父も、オラも。」後半、ここで柱に手をドン、としたとこで「棘…」ってちょっと泣きそうに痛そうな演出追加されてたけど、ほんと何処にでも笑い突っ込んでくる。みんな上手いから出来る、白けるギリギリ攻めてたよね。

 

殴られた荒武者隊が、これも後半からリアクションするとこがオンマイクになって結構毎回違う反応しててすごいなぁと思った。たぶん1回本気でビンタが入ったのかな?「痛い痛い…」ってしてるのに「大丈夫か?」って頬っぺた撫でてるのとか目撃して、お前ら可愛すぎかよ…!ってなりました。「関係ねぇよ。百姓とか侍とか関係ねぇ!」少吉と荒武者隊はどっちのほうが年上なのかなぁ、少吉のほうがちょっとお兄ちゃんかな。「連れて帰るなんて言わないで!」あたり、甘えたな弟みたいだもんな。絆されるじゃないけど、お父さんの心情も思いやれる少吉だから、ここにこの子たちがいて良かったとも思ってくれるのかな。おにぎり受け取って「うめぇ」と頬張ってくれたのを見て、ぴょんぴょんぐるぐるしながらやったー!ってしてる荒武者隊可愛いし、そこまでの流れを緊張しながら見てた太夫とガールズたちが、ふっと緊張を解いて柔らかく笑って見てるのがとってもお姉さんで良かったなぁ。ガールズたちにとったら、荒武者隊はバカな可愛い弟たちなんだろうな。

 

おやっさん、遅ぇなー。俺、ちょっと見てくる!」走り出て行った直後に聞こえてくる悲鳴。ほわんとした雰囲気は一気に緊迫感を纏い、全員がハッと見た奥にはザシンッと体が真っ二つに斬られる様子が見える。刀を袖で拭いながら入ってくるのは、赤い鎧を着た蘭兵衛。お化粧1番濃いのがここかな?いつからどうなったか細かいことは分からないけど、気付けばアシンメメイクが誕生。血糊メイクが左目で固定になったあたり…?左目のほうが赤が濃くてラインも太かったり、口紅も左はわざとはみ出してたり。日によってアシンメ感が薄かったこともあったけど、たまに人喰いかと思うほど口紅ひかれてて本当に狂気だった。

「蘭兵衛さん…?」

ザッと鉄砲を構えるガールズは、蘭兵衛だと気付いてないのかな?あまりにも躊躇なく銃を向けるよな、と思ってたんだけど、太夫に止められたところでハッとなるのかな。無界屋を見上げながら蘭の言う「蘭兵衛か…お前にそう呼ばれると胸に疼くものがある」が本当に酷い。後半、疼くものが、ある、って一呼吸入れることがあって、その溜めた一瞬は後悔?無界屋のこと、思い出した?と思っては辛くなった。

 

「欲しいのは狸穴二郎衛門の首」「だが、それを許すお前ではないだろう」「この無界の里での乱暴狼藉は誰であろうと許しはしない」「俺とお前で決めた掟だからな」

ここ、俺、なんだよね…蘭兵衛なんだよ…。日によって言葉の強弱が違って、二郎衛門の首を差し出せば本当にそれだけで無界は助かりそうなとき、無界を見逃す気なんてさらさらなさそうなとき、色々あったように思った。蘭と太夫が話していて、ガールズたちも今にも飛び出しそうになりながらそれを聞いてるとき、奥から飄々と出てきた天魔王はいとも簡単に女の子に首筋に刀を突き付ける。「さすが無界の女たち、どれもみな、ビューティホォー!」「だがそのビューティホォー、天を知るには無用のものだ」首を一閃、血飛沫で白い障子が赤く染まっていく。ここ、後半で気付いたんだけど、蘭兵衛はここすら顔を背けるんだよね。斬られる瞬間は見ない。見てない。見られない。なのに殺戮は始まってく。振り向いたときには、強い視線で太夫を見てる。太夫しか、見てない。

 

基本的に天魔王が下手、蘭兵衛が上手で立ち回り。上手のほうが太夫を含め女の子が多くて、下手が少吉を庇う荒武者隊中心。蘭兵衛は「助けて、助けて…」と懇願されたり、「蘭兵衛さん…!」と縋られるところまでは女の子たちを見てるけど、斬るとき、トドメを刺すときは顔を手で覆ったり、自分が顔を背けたり、背中側に回り込んで絶対に顔を、目を見ない。

「許せとは言わん」「だが、お前達の血が俺の中にたまったしがらみを洗い流してくれる」「その赤い血、無駄にはしない」

ここの、だが、を強く言うことが多かったな、と思う。天魔王に聞かれる「楽しいか?」に対する「ああ、楽しい…!」まで含めて、はじめから泣きそうな声のとき、ずっとずっと強いとき、段々と泣き声が混じってくるとき、すごく色んな蘭兵衛がいた。女の子の背中からぐりぐりえぐい刺し方するのが、お前達の血が〜のとこだったかな。あれもぐりぐりの回数とか角度とか結構違って、ひくほどエグいときあったね。

 

だいたい目が蘭しか追ってくれないからそんなに天魔王見てないんだけど、ほぼ最下手だったときの印象では、天魔王自ら攻勢に出てることってあんまりないんだよね、ということ。ガールズも荒武者隊も斬るけど、にやにやしながら挑発してるほうが多いし、蘭兵衛のほう観察してる余裕すらある。自分が斬った女の子たちに手を置く蘭兵衛を見て、天魔王は皮肉に笑いながら何を思ったのかな。

 

蘭兵衛は女の子たちを斬りながら、段々と泣き笑いのような表情になっていく。7月中旬くらいかな、遠くを見るように表情があんまりなかったこともあった。おるつを斬ったところ、後半で気付いたんだけど、斬ったあと空を見上げて泣きそうな表情をする蘭兵衛を太夫が正面から見てるんだよね。あんな顔見せられる太夫、辛すぎる。でもきっと、太夫はどうして?が先行してしまってるから蘭兵衛に銃が向けられない。ずっと手に持ってるだけなんだよね。荒武者隊が天魔王に向かっていってるところ、蘭兵衛は上手で女の子たちに手を置く。7月中旬?梁のところから慈しむような目をして覗き込むだけのときがあったようにも思うけど、軽く手を置くくらいはしてたかな。ぺたんと隣に座り込んで、肩とか背中あたりをトントンってしたり、撫でたり。8月中旬あたりが1番激しかったように思うんだけど、縋りつくように膝をついて泣き顔を伏せたりしてることもあった。もうやってること滅茶苦茶だし、本当乖離しちゃってて蘭丸に堕ちたはずなのに、無界屋という場所だからこそ蘭兵衛が存在してて蘭という1人のなかで蘭兵衛と蘭丸が両極端に走って引き裂かれそうなのにどちらにも行ききれないのがこの人の弱さであって、惹かれてしまうところなんだろうな、と思う。

 

天蘭2人が同時に動くように太夫と少吉を守る荒武者隊を斬っていく。ものすごいシンクロ…と思ったのここだったかな。荒武者隊を斬る蘭兵衛は、はじめのころは気怠げで、刀を左手に持ち替えて、疲れた、というように右手を振る仕草をしてたんだけど、後半はここがガラッと変わっていって、太刀筋が軽く、こんな雑魚どもといわんばかりに簡単に斬って、斬ったことすら忌々しげでこんな奴らの血がついた刀なんて、と大きく刀を二振り、三振りしてさらに柱になすりつけて汚いものを落とすようにしてたのが印象的だった。女の子たちを斬ったあとは、服で拭ってたんだけどね。下手でも天魔王に斬られた女の子の横にはぺたんと座り込んで、顔を覆って目を閉じさせて、頭を撫でたり、髪を直したり。そんな大切そうに触るのやめて、って思った。

 

「どうしてこうなった!」「ここは、アンタとあたしで作った救いの里じゃないか!」

太夫の顔がくしゃくしゃで、仲間を殺されてるのに蘭兵衛は撃てなくて、どうしていいのか分からない衝動が、あの銃を投げ捨てる行動なのかな。蘭兵衛は悲しい顔をして女の子を撫でていた表情一変させて、強い顔で太夫に向き直る。

「救いの里」

ここ、1回だけ発した言葉が泣き声のように聞こえたことがあって、こんな酷すぎる蘭兵衛に泣かされたことなんてなかったのに気付いたら泣いてた。ずるすぎる。壊したのは蘭兵衛なのに、それでも無界を想う気持ちが覗く。無界屋蘭兵衛で生きられたのに。もう、戻れない。そのとき以外は、基本的に太夫に対する声は強かったかな。強がり、というか。強く声を出してないと崩れてしまうんだろうな、と思った。

 

兵庫が駆け込んできて「どうしてアンタが太夫を斬ろうとしてる!」「気でも狂ったか!」いっそ狂ってしまったほうがラクだったろうな。「クズ虫が、消えろ」

銃声が響いて、上手にいた天魔王に被弾。太夫と蘭兵衛のやり取りのあいだ、天魔王は上手で遊んでる。女の子の上に座り込み、刀で荒武者隊やら他の女の子つついて、暇を潰してる。そして2人のやり取りに、にやにやしてる。本当、徹底的に、面白がってるだけ。どんどん堕ちればいいと思ってるんだろうな。撃たれた瞬間だけは驚いた顔をするけど、すぐにやにやに戻る。蘭兵衛は、天魔王を庇おうとサッと前に立つ。この前は対等にみえてた2人に、主従がみえる。蘭は天に、殿をみてるのかな。でも、ある意味、ここまで正気な蘭兵衛が天魔王を殿に重ねるかな…。それよりも、2人なら殿に近付ける、と思ってるほうが納得がいくような。そばに居たいから、居られるように思うから、天魔王と共に在ることを選ぶ。天魔王はそんなこと一切思ってないのにね。お前と共に、なんて嘘を歌う。

 

「現れましたな、駿府殿」「いきなり鉛の弾の歓迎とは隠忍自重の貴殿らしくない。徳川、家康殿?」ここの、徳川家康殿?で下手を向いた蘭兵衛が少し首を傾げながら刀を向ける仕草、好き。左側の顔の方が怖いから、それが客席向いてるのも良い。 

この辺りからワカでは天魔王が言ってた台詞を蘭兵衛が言うことが多くなる。それはきっと無界襲撃を決めるのが蘭兵衛だからかな。2人が二郎衛門に斬りかかろうとしたところで伊賀の忍び衆が登場。白の、なんていうんだろ、修験者の格好?半蔵だけ最初のころに黒の羽織り追加。分かりやすくなってとても良かった。「殿ぉー!」ここらへんの立ち回りの圧巻たるや…!アクションチームかっこいい!天蘭2人相手どって負けないどころか、余裕すら感じさせる半蔵さん素敵!あそこの二郎衛門を囲む忍び衆のほうに斬りかかりに行く蘭兵衛さんのめっちゃ跳ぶ感じも好き。スイッチ入ってるな!?っていう。

「おぬし、やるな。名はぁ!」「笑止!忍びが名を明かすのは死ぬるとき」この半蔵さんの台詞大好き。「伊賀の頭領、服部半蔵!」二郎衛門がサクッと明かしちゃうとこまで含めて。そしてそれ聞いて天蘭が綺麗に左右にコケッとしてるの可愛すぎかよ!と。お前らそういうキャラだったか?特に蘭兵衛!って感じだけど、もう全員が隙間をぬって笑いをとりにいくのが鳥だったからな。真面目と笑いの緩急がジェットコースター。急カーブ、急発進、急停車。

 

沙霧、渡京、贋鉄斎が駆け込んで来る。「あれ?がんてっちゃん?」天魔王の言うこの台詞は、最初のころはやたらと驚いて「贋鉄斎!?」だったのが色々変化をしていって(なんなら一幕のスーパー贋鉄斎タイムのネタ拾ったり)、だいたい「がんてっちゃん?」で固定されてたかなぁ。ニュアンスが驚きから、悪ふざけする子供になっていった感じはある。「あれ?」も、「あれっ?」だったり「あれぇ!?」だったり本当よく遊ぶ。そしてここで一幕登場シーンでやってたロックオン!を贋鉄斎にもして、「そうか、貴様が天魔王か」って言われて、にやにやと笑う。この2人は親しかったんじゃないかなぁ、と思うんだよね。贋鉄斎が可愛がってた、とか。少なくともじゃれ合えるくらいには近かった。対して蘭兵衛には「蘭丸殿!貴殿まで!」って、敬語を使うから、蘭丸は小姓として一段上にいたんだろうなぁ、と思うし、殿の寵愛を受けていた存在として、贋鉄斎も一歩引く、あまり近寄れない子だったんだろうなぁ、と思う。贋鉄斎は蘭丸が無界屋蘭兵衛であることをこの時点で知らない…というか説明されてるシーンがないから知らないはずだと勝手に思ってるんだけど、この酷い有様の無界屋が、二重の意味でもって酷い有様だということをいつ知るのかな、と思う。貴殿まで!には、こんなことをする貴方ではなかっただろう?が込められてる気がしたんだよね。一時期、蘭兵衛の「そうか、捨之介の策とは、貴方のことか」がやたらと縋るようで、止めてくれる大人がきた、というふうに聞こえて都合よすぎるし、酷いし、ずるいと思ってたんだけど、終盤は強い声になってたかな。自分で止まれない自覚があって、でも誰かに止めてほしいという願望をもつ、本当に本当に酷い人。

 

無界屋に火が放たれて、舞台上が真っ赤に染まっていく。蘭兵衛は客席に背中を向けて、ずっとずっと無界屋を見上げて、何を思ってたのかな。あの背中から感じるのは悲しい、どうして壊れてしまう、なのに、これをやったのお前だからな…!?にガツンと追い詰められて本当しんどい。なんか、分かってはいたけど、書けば書くほどしんどいな、この蘭兵衛。それなのに「ひくぞ、蘭丸」と言われて、物足りなげに「なぜ」と答えるのとか、蘭丸が色濃く出てくる瞬間もあって、ほんとこの二面性…。つらい。

「人間五十年、夢幻のごとくなり」蘭丸のここの声、大好きだったなぁ。後半は刀を立てて、体の正面で持つ仕草が追加されたのも大好きだった。「我ら天に生きるものの作るこの世の悪夢、たっぷりと味わうが良い」歩き去る2人の背中も好き。でも、天には生きてないよ、蘭丸。所詮、君たちも殿の真似事をしてるだけだよ。

 

2人を追おうとする兵庫を太夫が止めて、兵庫は初めて周りを見る余裕が出てくる。「あんたまで死ぬよ!」ここまで、太夫守るのに必死なんだよね。ここから沙也加の歌が流れるの、良かったな。殺戮から、ストンと落とされる。

♪~生きることが旅なら 私は迷子ですか~♪

燃え落ちていく無界屋を泣きながら見上げる太夫と、荒武者隊のみんなの名前を呼びながら、1人1人のところを駆け回る兵庫、それを、じっと見てる二郎衛門。自分も女の子たちの名前を呼んで泣き崩れていた太夫が、それ以上に泣いてる兵庫に平手打ちをして言う台詞は、何回観ても、何回聞いても泣いたし、思い出しても泣ける。

「しっかりしな!」「弱いものを守るのが荒武者隊だって、少吉さんと私守って!」

「あんた、良い子分持ったよ、兵庫の、旦那ぁ!!」

後列から見たときに、スクリーン含め、真っ赤な無界屋のなかにぽつんと座り込んでる2人が凄く頼りなく見えて、でも、この強い強い台詞が発せられたときに、空気が変わるのを感じた。最上手最前で見たときは、キッと眦を上げて二郎衛門に向かってくる太夫が本当に迫ってくるようで、その美しさと強さにまた泣かされたな。

「あんたたち、みんな一緒だ!」

二郎衛門は、そう言われて、その通りだときっと納得しながら、それでもこの無界屋を憐れんでくれるし、巻き込んでしまったと後悔する。「放っておけ!」と言ってくれるのは、だからある意味温情。

 

  • 無界の里裏手

女の子の遺体から髪を切り、名前を呼んでそれを並べていく太夫。渡京と贋鉄斎が遺体を奥に運んでいく。そういえば、この前のシーンからなんだけど、渡京の衣装がとっても好きです。紫ベースに金が入っているのに、色味が抑えられてる渋さが素敵。沙霧が太夫に蘭の花渡したときの、また泣いてしまいそうな太夫が、握りしめて、投げ捨てようとするのに、出来ない太夫が切ない。あそこで兵庫が帰ってきてくれるのは救いだよね。あれ以上、直視出来ないもの。

 

沙霧が捨之介を助けに行くことを兵庫に頼む。「死に場所くらい、てめえで決める」ここまではかっこいいんだけどね。「人を斬るのは1度で十分だと思ったが…」から、刀を抜くと赤錆だらけ。「きったな…えげつな…くっさぁー!」っていちいちうえぇぇって顔するし、沙霧もうわぁぁぁってリアクション可愛いからな。「刀鍛冶のおっさん!」「おっさんにおっさんと呼ばれる筋合いはない!」スコーンと笑いにもってくの、本当さすがですよ。「謝れー!刀に土下座して謝れー!」「すみませんでしたぁー!」贋鉄斎が兵庫の背中に刀なすりつけてんの面白かったな。でもこれだけ言うのに、贋鉄斎は受け取った刀を振って、あれは重さとか均等とかをみてるのかな?使えるようにしてくれる優しさね。

 

太夫も行く、と言ったあとの兵庫の「あんたに撃てるのか、あの男が?」が好き。太夫が蘭兵衛を想っていることを分かっているからこそ、出てくる言葉。「極楽太夫っていうのはね、地獄に落ちた男たちが極楽にいけるようにってつけた名前なんだ」「二人でね」いつごろの2人が、どんな風に話をしたんだろうな、と思う。色里を作ろうと思ったきっかけとか。…スピンオフ作品とかしませんか?

「道案内は私がする!」からの沙霧が、また泣きポイント。「私が赤針斎だ!」に毎回ぎゅうってしめつけられて、ボロボロしてた。「みんな、私を守るために犠牲になった」捨之介は察してたけど、初めて自分から言うんだよね。犠牲の上に、独りで立つ強さ。でも、独りは、孤独ではなく、仲間のなかの、1人になる瞬間。

口笛から「殴り込みなら人手が足りないんじゃないか?」「あまり信用してもらわないほうがいい」と笑いを誘う渡京だけど、太夫と兵庫のやり取り、贋鉄斎の言い分、沙霧の言葉を聞くまで結構ずっと葛藤してるんだよね。渡京がここで参戦してくれるのはこの人たちの真っすぐさに惹かれるのかな。懐?器?の大きさ。何度も裏切ってるはずなのに、なぜかここに居ることを許されている不思議、とか。あとは捨之介のため、っていうよりは、沙霧のため、なのかな。

 

「天魔王!てめえが雑魚だと思ってた連中の力、みせてやる!」

走り出した5人を覗き込むように見て、陰から出てくる少吉。手には鎌を持ってる。それを構えて叫ぶ声が強かったなぁ。だっと走り出して追いかける。ここからのTAKIさんの歌も大好きー!

♪~鳥が木の実の落としたら 百年後は森だろ~♪

走る5人と、スクリーンの映像が荒野を駆け抜けて、髑髏城に近づいていく。贋鉄斎がたまに遅れそうになるとか、小ネタもききつつ。

♪~そう 命さえありゃ儲けものさ 明日になったら開く花もある~♪

♪~笑おうよ 悲しみが溢れても 涙をふかなきゃ 愛が見えない~♪

髑髏城に入っていくところで、みんなを誘導する沙霧とハイタッチするようにうぇーい!ってする渡京が好き。あの2人本当可愛い。その直後の、閉じそうなスクリーンに入って、客席側に跳びながら体の向きを変えて強い目で客席を見ていく沙霧の一連の動きも大っ好き。

♪~希望と呼べばいい~♪

 

  • 髑髏城内

沙霧と渡京が駆けてきて、妙声と鉄機兵と遭遇。スクリーンがほぼ閉じてて、その前の舞台でやりとりが続いていく。渡京が胸元から黒手袋出してつけながらの台詞かっこいい。「かかって、こい」ここの殺陣めっちゃ好き。渡京の足捌きが綺麗なの。結果やられるけど。「もーうしわけありませんでしたぁー!(土下座)」に対する沙霧の「渡京ぉ~」がまたそれかよ、って呆れてて、脱力した仕草も相まってとても可愛い。渡京のことは、信じるとか信じないとかじゃなくて、こういうもん、って思ってそう。妙声たちも「あいつまた言ってるわ」って感じに指クイクイってしてるし。お金マーク作ってるのも面白かったけど、俗物的だなぁって笑ってしまった。四天王といいつつ、生駒以外はギャグ担当だからなぁ。勝てそう。ふふ。案の定コロ助くんに滑って転ぶお間抜け妙声に、昔の戦隊ものかのような音楽が鳴り、「そろばんに刃を仕込んだ二代目コロ助くん!」ってどっから出てきた!?とか、そろばんに刃仕込まないよ!?とか思うんだけど、「ひとーつ!」から鉄機兵倒していく渡京頼もしいし、「ご名答~!」で斬られていく妙声さんやっぱり面白いし、暗め影映りスポットでの「また、つまらぬものを数えてしまった(ジャジャン!!)」がツボ過ぎたので何でも良しとします。渡京素敵。

 

「会って極楽、遊んで地獄、男殺しの極楽太夫

輪胴轟雷筒ぶっ放す太夫かっこいいー!ここはスクリーンが開いて、玉座の間で使ってた真ん中に階段つきの段があるセット。太夫は角丸率いる雑賀の鉄砲を持った鉄機兵に囲まれたところで怯みもしない。角丸さんなんて、太夫に銃向けられただけで盾を並べたところに「乗ります、乗ります!」って大慌てなのに。でも自分のが優位じゃん?って気付いたところで「やっぱおります!」後半、角丸の動きに不平こぼす鉄機兵の声がよく聞こえるようになって面白かった。これだから本当に生駒以外の四天王は…。

太夫が撃たれる!ってところで兵庫が庇うように登場。「兵庫!」「俺がおめえの盾になる。そう約束したろ?」ちょっとラブロマンス始まるのかと思ったのに「贋鉄斎特製の磁石鉄板だ!(銃弾コロンコロン)」やっぱりギャグかよ!「ぬわあぁぁぁぁ」って聞こえてきてたの、やっぱり贋鉄斎の声かよー!よろよろになって現れる贋鉄斎。…そうだよね、消費すんだよね、それね。「ちょっと…水飲んできてもいいですか」「行ってこい!」髪の毛をくるくるいじいじし出す兵庫。「太夫が心配してくれるなんて、嬉しいねぇ」「びっくりしただけだよ!」「そうやって、少しずつでもぉ?俺のこと気にかけてくれるんなら」ってなんだか完全に2人の世界。「ここは、お前たちのうちじゃなぁーい!」的確にツッコミありがとうございます、角丸さん。後ろで全力で頷く鉄機兵さん。でもそこから自分の話始めちゃうんだ、角丸さん?格好つけてポーズをとろうとする前に「(パァン!!)能書きが長いんだよ!」ばっさりサックリやっちまう太夫かっこいいー!

 

爪月が出てきて、太夫を先に行かせる兵庫。

「死なないでよ?」「すぐに追いつく」

ここの兵庫のアクション好きだったんだよなぁ。結構激しいのに、軽々足とか上がる。背中に背負った刀を抜くと「(スポンッ)…みじかっ!?」刃渡り…10㎝くらい?「うるせー!研いだらこんだけになったんだ!」贋鉄斎、研いでくれたのね。爪月さんの槍が長いもんだから、対比が面白すぎた。スカッ、スカッって当たりも掠りもしないあの感じ。爪月さん、手足も長いしねぇ。兵庫の脇に槍を挟んで「んふー♡んふー♡」と言わんばかりににじり寄っていくのも面白かったな。突然のピアノ曲で笑ってしまう。トドメだ!と刺されそうになったところで少吉登場。

「鎌使いなら、村一番だに!」「恰好つけてねぇで、これを使え!おっとう!」

鎌殺陣きたぁー!身軽に跳んで、くるくる鎌回してく少吉くんまじうまい。最初のころは兵庫も少吉も結構お互いを気にしながら合わせてたけど後半はそんな様子もなく、たまにバラけつつ、踊りながらの鎌殺陣。最後の2人で見得切るところがいいよねぇ。「刀みじか!」と息子にまで言われ、そのまま仕舞おうとしたところを戻ってきた贋鉄斎に見つかって玄翁でゴツン。「まず、刀を拭け!」

「お前たちは捨之介を救わねばならぬ。行くぞ!」

 

沙霧と渡京が覗き込むようにしながら入ってくる。 捨之介と沙霧が再会した倉庫のセットなんだけど、物はなくなってて階段と下手の段のある部分を主に使う感じ。階段の上から、赤い鎧を纏い、仮面を被った人物がおりてくる。「天魔王…!」って沙霧が言うんだけど、ごめんね、サイズがね、小っちゃくてね…!一発で捨之介だと分かってしまうけど、あれはね、仕方ないよね。斬りかかってくる捨之介に対する渡京。「下がってろ、沙霧!」遅れて合流する兵庫、少吉。「沙霧、逃げろ!」ここも、みんなが沙霧の名前を呼ぶのが好き。でも沙霧はこの時点で捨之介だと分かってるんだよなぁ。輪胴轟雷筒を構える太夫に対して「待って!」と言い、贋鉄斎に斬鎧剣を要求する。「貸せよ、じじい!」ってたまに出てくる荒さ大好きですよ。重そうに斬鎧剣を振り回す沙霧は、何度も何度も転がりまわる。ここの立ち回り、段差も階段後ろに回り込む動線も使いながらやるからそれだけでも大変そうなのに、仮面まで被ってる捨之介の凄さたるや。段差つまずきそうになったりするのも見たけど、本当身体能力高い…。開幕前の密着映像で青白い顔しながらやってた人と同一人物って本当ですか。

 

沙霧に一太刀浴びせようとしたところで、ふと止まる仮面を被った男。次の瞬間、順手で持っていた刀が、逆手持ちになり、構えたところでピタリと止まる。この演出好きだったなぁ。沙霧の振り回す斬鎧剣が仮面にあたり、割れたところから見える捨之介の顔。「バカァ!」「バカァ!」「バカァー!」げんこつ握って殴りかかる沙霧。3回目かな?パシッとそのげんこつを捨之介が受け止めるんだけど、結構手が待ち状態になってることもあったね。でも、あそこも大好きなシーン。「沙霧か?」って少し弱い声を出すのが、たまらない。「バカァ!」抱きつく沙霧可愛すぎかよ。ずるいよ。そのまま欲しいよ。戸惑いながら沙霧を見下ろして、周りを見渡して、状況を掴む捨之介。「薬を盛られたな」と割れた仮面を手にしながら言う贋鉄斎。このあともずーっと仮面をいじって遊んでる。くっつけたり、外したり。みんなの前に出てくる捨之介の、ここのぼさぼさ髪良かったよね。

 

「それにしても、よく分かったな、沙霧」「わかるものよ、女にはね」

ここ、ぺたんと体育座りしてる沙霧が、へ?って顔上げるのも可愛かったな。沙霧の腕を掴んで「こんな一本気な拳固で正気に戻らないやつは男じゃねぇ」勢い込んで抱きついたりするのに、ここで放心状態の沙霧は1回エネルギー使い果たして、ほっとしたんだろうな、と思う。 

「ありがとう、俺のために」「あんたたち凄いよ」「よく、ここまで」

捨之介は助けが来るなんて微塵も思ってなかったんだろうな。沙霧のことだって、自分が助けたと思っていたのに、ここでは逆に助けられる。これまであんまりなかったシチュエーションだろうに、ぺこりと頭を下げる捨之介に、その人柄が透けて見えるなぁと思う。

「天魔王は?」「上だ!」ダッと階段駆けあがっていくとき、袴を持ち上げる捨之介ちゃんかわいい…!最後に駆け出す贋鉄斎は「針!針!」っていってついてくんだけど階段上がったところで客席を見て「あれ、ここ景色がいいねぇ」1回仮面を落としたんだか、駆け上がるのが遅くなったことがあって「針ぃー!」かなんかだけ叫んですっ飛んでいったことがあった。スクリーン閉まっちゃうから、景色の台詞入れる余裕がなかったんだよね。

 

  • 髑髏城内(天魔王と蘭兵衛)

下手から天魔王と生駒が歩いて出てきて正面へ。「天魔王ー!」上手からは蘭兵衛が駆けてくる。ここのお化粧は目元がしっかり赤ラインに赤い口紅だったかな。化け物感はなくなって綺麗になってる。真ん中で2人が顔を合わせて蘭兵衛が「どこに行っていた」「物見の兵より急報が入った」って状況報告をするんだけど、終盤なぜか2人が顔をめちゃくちゃ近くまで寄せてて、それ何cm?えっ?えっ!?近い近い近い…!ってどきまぎしました。「先頭は家康の兵とか」くらいまで?結構長いこと近かった…ありがとうございます。ありがとうございます。しかし何の違和感もなく、天魔王の下についてる蘭兵衛になってるんだよね。あの無界襲撃から何日経ってるんだろうな、とか、きっとその間この人はそれを思い出さないように秀吉軍討伐のことばかり考えていたんだろうな、とか想像してみたりした。蘭丸として在るために、天魔王のそばにいる。

 

「行こう」という蘭兵衛に対して、「この城は捨てる」という天魔王。蘭兵衛の「…え?」に、全く疑いがないのがきつい。この場において、蘭兵衛は天魔王のことを信じてるんだよね。天魔王のことだと言いすぎか…でも、豊臣軍を迎え撃つことを当然としてる。もう、この人にはその道しか進むところが見出せない。だから、兵は置いていけ、なんだろうし、天魔王が逃げることに関しては一瞬の戸惑いのあとにコイツはこういうやつだ、と思っているようにみえる。やっぱり天魔王に殿を見てはいないかな…殿は殿として存在してそう。そう思ったときに、口説きのあと、自分のことを黄泉の国から舞い戻った天魔の怨霊だ…と言った蘭兵衛を思い出したうえで、天魔王の歌う♪殿が叫んでいる お前と一つになりたいと〜♪が重なってきたんだけど、殿とひとつになったと思ってる…思いたい蘭丸なの…?そうすると、そりゃ、光秀の謀叛が秀吉の入れ知恵だと思ってるんだから、兵力に差があろうと秀吉軍と戦おうとするだろうし、勝つとはいかなくても善戦するくらいの読みはありそう。だって天魔だもん。天蘭対の表現ってこういうことかな…。殿への想いも対極。

 

「それは、困るなぁ…!」生駒がそっと天魔王に刀を差し出す。生駒は、知ってるんだよなぁ。

「お前の死に場所はここだからだ」

右腕を斬られた蘭兵衛は、それでも見事なスピードで刀を抜き、対峙する。口説きと同じように、御伽衆が周りを蠢いて、今度は明確な殺意をもつ。そんなものは一太刀ずつで斬っていく蘭兵衛だけど、斬られた右腕を庇いながら、左で斬り、右に持つときは左を添え、徐々にだらんとなる右腕に、負荷がかかっていくのが分かる。ここの生駒との立ち回りも好きだー。生駒はゆったりした剣…違う、あの武器なんだろ…武器捌きなんだけど蘭兵衛に負けないだけの強さはあるんだろうな、と思わせる。 仕留められる、と微笑む顔がめちゃくちゃ綺麗で天魔王の役に立てる、という誇りにもなってるのかな、と思うのにその天魔王自身がさっくりと背後から刺すし「天魔王様…なぜ…」の台詞が痛い。 生駒こそ、ずっとずっと天魔王を信じて、そばにいたのに。 「知れたこと」「私が逃げたことを知るものは少ないほうが良い」斬った刀を舐める仕草はいつからやってたのかな。ぞくっとする視線。「貴様というやつは…!」

 

「良いことを教えてやろう」

ストンとテンションを落とした天魔王はここまで見せていないくらい平静な顔をしてて、それが逆に怖い。

「殿は最期までお前のことばかりを気にしていた」

『天下のことは忘れろ。織田のことも忘れろ。お前の好きなように生きよ』

 「そう、蘭丸に伝えよとな」

これを言われて、意味を理解していく過程の、頼りなさげで、道しるべをなくした迷子の子供のような顔した蘭兵衛が「…え?」と呟くようにするのが辛くて切なくて悲しかった。その通りに、生きていたのに。忘れることは出来なくても、胸の奥に仕舞えてたのに。

「そんなのは殿じゃない」「あのお方の最後の言葉はそんなくだらないことじゃない」激昂していく天魔王に対比するように、蘭兵衛は呆然として虚ろになって泣きそうに顔を歪めて、どうしてこうなった…?と自嘲する。本当に、積み重ねて、積み重ねて、突き落とす。天魔王の憎しみの深さ。

「俺を謀ったか!」泣き笑いのようにも、膨れ上がった感情を爆発させるようにも聞こえた。ここが、俺、なのも辛い。咄嗟に出てくる1人称が、蘭兵衛である事実。無界屋蘭兵衛として生きていた、生きていけた蘭兵衛。

 

ここの最後の立ち回りが、あえてスピードで魅せてる作りなんだろうけども、分かっていても毎回速すぎて凄かった。目がついていかない…。蘭兵衛が上段、天魔王が下段で客席に背中を向けてる構図は実は少なくて、むしろここくらい…?必死の形相の蘭兵衛から溢れてくる感情は、どうして、なぜ、と天魔王より自分を責めてるようにみえた。きっと、全てに気付いてる。天魔王は、自分が必要ではなかったこと、殿を想う気持ちが違うこと。殿を引き合いに出されて、まんまと罠に嵌ってしまった自分に自嘲して絶望する。後半は特にそうだったように思うんだけど、マイクに入らない蘭兵衛の叫び声が悲痛でしめつけられた。泣き叫ぶ。ここまでで1番滅茶苦茶な太刀筋なのに鋭い。なりふり構わない。なのに、あと一太刀、あと一振りで天魔王を斬れる瞬間、首すじにつけた刀をぴたりと止める。斬れない。ぐっと力が入って、自分でもなぜって思ってそうなんだけど、斬れない。だって、選んだのは自分だから。天魔王と殿を同一視せずに、だけど殿の近くに在れると思って天魔王といることを選んだのは、他でもない蘭兵衛自身だから。それを思って止まってしまう、葛藤してしまうのが、蘭兵衛という人。それを、天魔王は哀れだ、とそこまで読み取って笑う。最上手最前で見えた、ここの天魔王の表情は、哀れんで、笑うという、それ。ここまで1番見せていた嘲るように笑う表情で蘭兵衛を見つめてる。斬れないだろう?蘭兵衛は、それを見ながら、斬れなくて、斬れなくて、苦悩のすえに叫ぶ。 

 「務め、ご苦労」

後ろ手に刺す天魔王の表情はにやりとした、わざと作ってるであろう大仰なものに戻っていく。蘭兵衛を突き落として、満足したのかな。ここの刺された蘭兵衛の背中を反らせたポーズが絶妙で、天魔王、お前…と、掠れるような声を出したあと倒れ込む一連の動作が綺麗。蘭兵衛が倒れ込んだところで、捨之介たち7人が駆け込んでくる。

 

「生きていたか」「捨之介は死なない!」

沙霧は強く天魔王を見ていて、太夫は蘭兵衛を見つめてる。蘭兵衛も太夫を見てるように見えた。だからこそ、太夫が輪胴轟雷筒を構えて撃つ瞬間までに天魔王を庇える位置に走り込める。前半はわりとさっと立ち上がって駆け込む早い動作だったけど、後半にかけては、よろりと立ち上がって、何とか庇うところまで行く、に変化してたかな。あれだけ斬られたあとだから、早いのにはちょっと疑問もあって、この演出変化はとても好き。終盤はこの辺から結構ぼろぼろだった。

「何!?」

「勘違いするな。ここで貴様を裏切れば、俺は貴様や光秀と同じになる」

ここ、最初のころ裏切る=主君を裏切る、と思っていて、蘭兵衛は天魔王に殿をみて仕えているつもりなのかな、でも天魔王が光秀を唆したこと知らないんだよね?とドキリとしたんだけど、やっぱり単純に天魔王は蘭兵衛を裏切る、でいいのかな。さすがに殿を裏切ったことを知ってたら天魔王のそばには行かない、よね。でもここで自分に対する裏切りを引き合いに出すかな…とか思ったり。蘭兵衛さん、あんまり自分のこと大事じゃなさそうだから。裏切られる可能性を考えなかった自分が悪い、と思ってそう。自分は天魔王のこと斬れないのにね。そう考えると、この人が自分からしに行く無界惨殺はそりゃあ凄惨だし、あの身が引き裂かれそうな対極な人格…うーん、見える二面性は痛い。

 

ここの天魔王の表情は、驚いたあとに一瞬泣きそうというか、人の男としての素に戻ってるんじゃないかなと思うんだけど、そうだと思いたいってのが強いから分かんないな。蘭兵衛は天魔王を突き飛ばしながら、自分を支えられなくなって倒れ込む。後半は床几まですっ飛ばしてバタンとなってて、もう力なんてなさそうだった。

「それだけはごめんだ…!」

この台詞を、蹲りながら、必死に必死に言うようになったのは後半?終盤?蘭兵衛のなかには、揺れながら、色んな想いが溢れながら、それでも自分で決めたことはやり遂げるという一つの筋は通っているのかな、と思う。だからこそ、痛くて切ない。「哀れなやつだ」天魔王が蘭兵衛に対して言う。ここまでは、人の男が少し入ってるかなと思うんだけど、このあとはガラリと口調を早口に変えて「生き残るのはどちらかな?」と階段を上って行ってしまうから、そこに思い残すものはないように感じる。

 

「待て!」「行かせん」

蘭兵衛は倒れ込んでたところから、もう1度何とか起き上がって階段前に立ち塞がる。後半は本当に、なんでそこまで?と思うほどボロボロになりながらの動きで、駆け寄れなくて途中でストンと尻もちをついたり、階段前でも立っていられなくて膝をついてたり、手すりに縋って何とか立っていたり。執念だったのかな。もしくは意地?

「蘭兵衛…お前は、お前は最後まで…!」

階段の前からふらりと離れて、舞台中央へ。

「所詮、外道だ…」

前半は立ってた?座り込んでても顔上げて言ってたと思うんだけど、中盤からは倒れ込んでて、終盤は手をついても起き上がれなくて、起き上がれなくて 、蹲るように倒れたまま言ってた。「さぁ、来い」も、最初のころはなかったんだよね。それがすごく優しい、穏やかな、一幕の最初のころみたいな蘭兵衛の口調で太夫だけを見て「さぁ、来い」と言うようになって、中盤の一時期はここから強い声だったこともあったな。終盤はここでもまだ顔を上げられなくて「さぁ、来い…来い」って2度入ることもあった。何とか立ち上がって、両手を広げて「来ぉぉぉぉぉい!!!太夫ー!!!」全部ぶつけられるような、息をのんでそのまま動けなくなったこともある、最後の最期だからこそ出せるんだろう、物凄いエネルギーだった。太夫に撃たせる、ずるい人。「馬鹿野郎!」殴りかかる太夫が、本当に切ない。止めてくれる兵庫は優しいよね。

 

「今度は迷わず進めよ。殿のところへな」

捨之介の言うこの言葉は、知らないうちに殿の遺言通りに生きていたのに自分から違えてしまった蘭にとっては結構えぐいのかなと思うんだけど、でも、この殿は苛烈ななかに結構大らかなところがありそうだから絶望させられながらも自分の筋は通した蘭を、全くって苦笑いしながら許してくれるんじゃないかなぁと思う。蘭が、それを分かるまでそばにいてくれそう。もしくは鳥蘭としての後悔を拗らせて、拗らせた結果輪廻のなかで月天に…っていう転生したぁぁぁって、鳥前半ではありえなかった考えはやめましょうかね。ヲタクはこういうの好きすぎて困っちゃうよね。

 

贋鉄斎がこのシリアスな流れで「針を抜いてもらおうか」ってぶっ込んでくるのが2日目観に行ったときは、間ぁ悪すぎ!余韻!!!ってめっちゃ思ったんだけど、その1週間後に行ったら絶妙な間になってて、さすが…と思った。後半になってから、贋鉄斎だけ蘭兵衛が太夫に撃たれるときに顔を背けてるってことに気が付いて、ふざけてるところばっかりが目立つけど、本当は情に深くて、人を助けたい、と思ってる人なんだろうなぁと思った。昔馴染みの子たちが、選んだ道の先で生きること、死ぬことを、痛々しいとも、もっと道はあったはずなのに、とも思いながら見てることを選んだ人なのかな。大人で、ある意味当事者ではなく、俯瞰で見てる人。

 

みんなが階段を駆け上がって行くなか、まだ蘭兵衛に触れてる太夫。肩あたりを撫でてることが多かったかな。1度髪の毛を直すように撫でるのを見た。兵庫が最後にぽん、と太夫の肩を叩いて、みんなを追いかけていく。顔をあげて兵庫を見送った太夫は、蘭の花を取り出して、蘭兵衛にその花を手向けて立ち上がる。スッとした立ち姿で、でも上を向いてる顔が泣いてて、その姿のままスクリーンが閉まっていくのが本当に切なかった。

 

  • 髑髏城内(百人斬り)

城内をぐるりと動いていくようなスクリーン映像。両サイドから鉄機兵が声を上げながら駆け込んでくる。センターに集合したところで「おーっ!!」と声が上がってスクリーンオープン。ここの声上げる鉄機兵好きだったなぁ。スクリーンが開くと捨之介と贋鉄斎が登場。贋鉄斎、でんでん太鼓に着想を得た雷の力を使えるぐるぐる回るの背負ってるー!小型化に成功したんですね…!そしてマイク持ってる贋鉄斎。それはもともと電極だったやつ?デデンッと音が鳴り始めて照明が赤と青を交差させる感じ。
♪〜吠えろ叫べ稲妻 刺さる脳天ビリビリ〜♪
♪〜好きなのよ この気持ち それじゃ そろそろやるか 捨之介〜♪
まさかの歌いながらの百人斬り!これがね、殺陣もアクションももちろん凄くかっこよかったんだけど、歌って、更に音に合わせて振りもついてたのがすごく良かった!贋鉄斎の周りに捨之介、兵庫、少吉かな?みんなでポーズとりながら、刀研ぎながら、ボックス踏むのとかめっちゃ好きだった。絶妙なアンバランス。みんなが順番に出てきて、捨之介と刀交換していくのもめっちゃ好き!

セットは最初のスクリーンオープンのところが彼岸花畑。ここが彼岸花畑だって気付くのに数回かかったよね…。衝立…。結構広いのに黄泉の笛でしか使ってないのもったいないって思ってたんだ…。兵庫、少吉が結構な勢いで刀を投げながら鎌殺陣も入れながら参加。そういえば刀落としたの観たことないかも…?すごい安定感だった。そのあと1度スクリーンが閉じて、髑髏城内の上手に中二階があるところへ。階段下のところから太夫と渡京が出てくるんだったかな。沙霧は斬鎧剣を持って、その後ろからダッシュで捨之介のところへ。ここの、沙霧を見送って太夫と渡京がサムズアップするの大好き!
♪〜キレキレトゲトゲ キレトゲ〜♪
捨之介の殺陣が躍動感に溢れてて本当にかっこよかった。

立ち回り終わりの捨之介よりも歌い終わりの贋鉄斎のほうがぜぇはぁ。「おいおいおい…」って心配して覗き込む捨之介ちゃん優しい。
「捨之介!斬鎧剣だ!」「おう!」
ここの剣差し出す沙霧も大好きだし、受け取ったあとの捨之介の「天魔王!天魔王は何処だ!ケリつけようじゃねぇか!」も大好き。斬鎧剣がね、すごく重そうなんだけど、それを肩に担ぎ上げるのがたまらない。

  • 髑髏城内(捨之介と天魔王)

閉じていたスクリーンが開いて、玉座の間で使っていたセット。正面の絵が入れ替わる形で2枚あるんだけど、2日目観に行ったときはこのスクリーンオープンから2枚目の絵になってて(イカロスの墜落?)、正面から見たら天魔王の顔の位置がちょうどそのイカロスの顔の位置と重なってて、あえてそこを合わせたのかな…って思うと結構ゾッとした。そのあと観に行ったときはシーンはじめは1枚目の絵になってて、血を流し始めた天魔王がバァンッと後ろの壁に当たったところで2枚目になったから、あの日だけだったのか、演出の変更があったのかな。

鎧を着込んで待っている天魔王様は、はじめは「来たか…」ってにやにや余裕そう。
「貴様の腕で私を倒せるとでも思っているのか?」「地の男風情が偉そうに」
本当この天魔王は捨之介を下にしか見てない。
「天のお方は天に召されなければならない。天に昇ってその遺志を私が行う」「それこそが、天、天、天の摂理」
これ最初に聞いたときは何言ってんだ…!?と思ったし、正直戯曲で言葉として意味を捉えてからは余計になんつー理論…!ってなった。天=殿を妄信してはいるけど、殿の一部分だけしか見てないからその一部分を外れた殿のことは認められないし、そんなものはいらない。光秀を唆すに至るその前に、一体何があったんだろうね。蘭丸の溺愛とかはパーツであっても核じゃない気がするんだよなぁ。

「なめるなよ。地の男は這いつくばってからが本番だ」
これをこの捨之介が言うのが本当に好き!まさに地を這いつくばって生きてきてるもの。きっと汚れ仕事とかだって厭わずしてきたんだろうと思わせる。斬鎧剣を振り回しながらの殺陣が、ここまでの軽く飛び跳ねるような立ち回りとは全然違って、それだけこの天魔王を倒す、ということにかけてきた重さが伝わるようだった。斬鎧剣が途中で折れちゃったのは前半で何回か見たかなぁ。後半はたぶんほぼなかった?折れちゃったときもさすがのリカバリーで動きのなかとか台詞で繋いでたね。

斬鎧剣の仕組みを見透かしたうえでにやにやと笑い続ける天魔王様。「アーイ、どうした捨之介?この私を倒すのではなかったのか?」ただ、ここらへんから言い回しに強さが戻ってくるというか、ふざけてんの?っていう抑揚とかがなくなってきて、人の男の本来の口調になっていく気がした。天魔王が天魔王となるべくして作ったわざとらしさが抜けていくというか、ある意味、夢中になってる、余裕のない天魔王なのかな。ほんとこんだけ極端に振っておいて成立させるとかバケモノだわ。階段上のところで、仕留めた、と足をダァン!とした瞬間に足元から剣で貫かれる。「何!?」と驚愕する顔は初めて見る顔。

「その鎧を殿が作ったとき、俺にこう言った」
「天が慢心し、民を踏みつけようとした時は、地に生きるものがこれを戒める。それを忘れないよう、足の裏に急所を作った」
階段上で屈みこみ、強く天魔王を見る捨之介、舞台の前方で呆然として膝をつき、ここまで作ってきた表情が全部抜け落ちたような天魔王。「まさか、そんな…!」鎧の仕掛けを唯一知っていた捨之介、殿の寵愛を受けていた蘭丸。天魔王はここで自分だけが、何も残されていないと思ってしまったんじゃないかなと思う。蘭丸に対して殿を見限ったように言った「そんなのは殿じゃない!」が跳ね返ってくるように、本当は“そんな殿”でもいいから、何かを残してもらいたかったことに気付く。でも、本当は残されてると思うんだよね。殿が最期に天魔王に向かって「蘭丸に伝えよ」と言うのは、お前なら生きながらえて伝えられるだろう?ここを抜け出せるだけの技量があるだろう?という信頼があるんだろうし、お前も生き延びろ、ということだと思うんだけど、そこが伝わってない。人心を掴むことに長けているはずなのに、自分に向かってきていた想いに鈍感なのは、哀しいよ、天魔王。哀しい、哀しいと言い続けた人の男の、本当の哀しさは、本人がない、残されていない、と思っていること。だから、本音を隠して、道化のように天魔王として生きてきたのに、この場でほのめかしも迂遠な表現も使わず、真っすぐにお前を倒す、と突きつけて、突き刺す捨之介は怖い存在になる。民を踏みつけた天魔王を、捨之介は許しはしない。
この殿の言葉は、最初結構意外だったんだよね。天魔王や蘭丸からは“強い”殿ばかりが浮かぶから、民のことに言及することもあったんだな、って。強いばかりじゃなくて、きちんと民のことを想ってる人。それを知ってる捨之介だから、野武士に襲われた村を助けるし、自分の手の中で亡くなった女の子のことを8年経っても覚えている。殿が色濃く浮き上がれば上がるほど、捨之介、天魔王、蘭兵衛の3人が違う立場から違う殿を見て、想って、夢中だったんだな、と思う。年長だった捨之介が1番多角的に殿のことをみてたのかな。

「だったら…!」額から血を流し、血に噎せながら、血を吹いて吐き出される言葉は悲痛だった。血に噎せながら言う台詞が本当に吐くようで、昔々は仲間を持ちたかった、持っていたと思っていたこともあったのかなって想像したけど、人心を操るという部分が邪魔をして、離れてしまったのかな、と思った。人斬りの技を持ち、人心を操ることの出来る人の男は、天魔王としては最期まで仲間なんてものは持てなかったし、持ち得なかった。「天魔王として、死ぬがいい!」バァン!と壁を打ち抜き、背中から落ちていく天魔王。ここの、「…え?」「なんだと?」と訝し気な捨之介は、天魔王を倒したというのに、全然納得いってなさそうだったな。沙霧の「やったな!捨之介!」が上滑るというか。天魔王の不穏な空気が残ったままに思った。

徳川の軍勢がなだれ込んできて、「俺が引きつける」という捨之介に対して「捨之介も一緒だ!」って掴みかかる沙霧からは絶対に一緒に抜け出すって強さが見えた。捨之介は、あの強さに弱いんだろうなぁ。
「この髑髏城!みんなで生きて抜け出して、また会うぞ!」
全員が頷いて、徳川軍と対峙し始めて、立ち回りへ。捨之介は沙霧を庇いながら、兵庫と少吉も少し、太夫を庇いながら、背中を預けて、手を引いて、雨の降る関東荒野に向かっていく。関東荒野に移ってから、照明が逆光のようになっていって、水飛沫が上がって、立ち回りがスローになっていくところは、後半、毎回ぼろっぼろ泣いてたなぁ。ここの沙也加の歌も大っ好き。
♪~明日が険しい道でも 旅を続けるでしょう~♪
7人並んだところなんて本当しめつけられるというか、思わず声が出てるんじゃないかってくらい泣いたなぁ。あの7人並んだシルエットの良さってなんなんだろうね…。不思議。でも、もしかしたらあれを見るために行ってたんじゃないかなって思う。
♪~光 向かうから~♪

  • 関東荒野

スクリーンが閉じて、髑髏城から遠ざかる映像。負傷した徳川兵が上手、下手それぞれから歩いてきて交差していく。上手が肩を支えあって旗?を杖のようについて歩いていく2人組、下手が1人プラス担架を持った2人だったかな。上下に自信がない。花のころに、なぜ同じ徳川兵のはずなのに逆方向へ行くのか?っていうのを見て、最初に気付いた人凄いなぁ…と思ってしまうくらい、あっさり見てたんだけども。何かの象徴なのかなぁ。花はね、天魔王が蘭兵衛の遺体を運んでいるってのもありだな、って思ったんだけど、鳥は絶対ないだろうし。ライビュで抜いてきたあたりが意味深なんだよなぁ。

 

スクリーンが開いて、明るくなった関東荒野。センターの上からよろめきながら捨之介が下りてくる。

「見つけたぞ、天魔王」「…へ?」

徳川兵に囲まれた捨之介は、ぼろぼろになりながら、それでも剣を振るう。けれど、踏ん張りがきかずに足を滑らせ、何とか抑えてはいるものの、これまでとは違って多勢に無勢なのがみえてしまう。

「浮世の義理も、昔の縁も、三途の川に捨之介」

「泥を啜って足掻いた俺の、ここが命の捨てどころってわけか」

地の男、忍びのものとして描かれた阿部捨之介のためのこの台詞が、本当に大好きだった。這いつくばって、泥を啜って、きっと後ろ暗いこともたくさんして、でもそれは殿のため、殿を助けるがため、その、殿の想った民を守るためにしてきたこと。「この首差し出せばもう無駄な血は流さない。そう約束出来るか?」死にたいとは思ってないし、意地汚く生きてきたと思ってそうだけど、自分の命で救えるものがあるのならその命を厭いはしない。

 

「お待ちください!」

 天魔の鎧を持った沙霧、兵庫、太夫、渡京、贋鉄斎が上手から入ってくる。沙霧が家康の前に片膝を立てて、仮面を差し出す。「さぁ、天魔王の首、お持ちください」ここからの沙霧の絶対に家康から目を離すものかとする姿勢と、絶対に捨之介を渡したりなんてしないという思いは本当に強くて、一緒に固唾を飲んでいたような気がする。「からっぽの仮面か」半蔵に縄を解くように命じる家康は、二郎衛門のときとは全く違う威厳がみえて、本当狸だな、と思う。沙霧が捨之介に膝でにじり寄るように駆け寄って、早くこの縄解け!と言わんばかりに「おい!」って言うの好き。ときどき捨之介の前髪直したりしてて、お姉ちゃんで可愛かったなぁ。そこからの「金、五百枚!」も大好き。あそこ、兵庫も太夫も、そういえばそんな話あったな?って沙霧が言って初めて気付いたようなリアクションするから、一幕の二郎衛門さんが金五百枚って言ってた場面、沙霧はあんなに泣いたりしてたくせにちゃっかりしてやがんな!ってなる。半蔵に斬りかかられそうになった瞬間、捨之介が懐に手を入れながら、サッと沙霧を庇う位置に動くのたまらなかった…沙霧のことは本当最初から最後まで守ろうとする。兵庫たちが本当に金五百枚だー!ってしてるなか、捨之介だけは家康のほうを見て、頭を下げるしね。寛大であってくれたことに、この上なく感謝してる。半蔵は最後まで斬りかかってきそうだったけどなぁ。家康の言う「ここに眠る魔王の魂を~」の、まおぉ↑うの~って言葉回しが好きだった。二郎衛門さんのときから、ちょいちょい言い回しに伸ばしとか上がる感じがあって、それが良いんだよなぁ。

 

「肝が冷えたよ」って捨之介に対する沙霧の「こっちだよ!」「どうしてそんなに死に急ぐ?」がさぁ…この沙霧は、絶対捨之介のこと見張っててくれる、というか引きずり戻してくれるなぁと思った。で、それを捨之介が受け入れて、両手を沙霧の肩に乗せて言う「恐れ入ったよ、沙霧」がたまんないんだよね。

「俺の上に覆い被さっていた天を振り払ってくれた」

やっぱり捨之介の上にも天=殿はずーっと残っていて、むしろ自覚的に残して、そのための復讐に生きてきてるんだけど、沙霧の存在が、その生き方を変える。この場面の関東荒野が1番明るくて、天が振り払われたのを表してるのはすごく好きだったなぁ。初めてパァーッと明るくて暖かいんだよね。

「あの首は、ひょっとしたら信長公の首だったのかもしれねぇな」

捨之介は、そうだということを知らないんだということに、ここで初めて気付かされる。知ってたら、どうなったのかな…いや、前を向いた捨之介が、首にこだわったりはしないだろうけど、1度くらい抱きしめてみたりしたかなぁ。殿はきっと、笑ってくれるような気がするんだけどね。

 

金五百枚を前に、割り込んできた渡京がそろばんをはじきながら袋にお金を詰め込んで「…よし!」「か~ねなんて本当は欲しくないんだけどね~」って川渡ってく足取りの軽さよ。「嘘つき渡京と人は呼ぶ!」飄々とした去り際が、逆にこの6人のことを好きだったんだろうな、と思わせる。憎めないんだよなぁ、渡京。沙霧のこと守るし。さじ加減が絶妙。そんな渡京とは逆に金どころではない贋鉄斎の「捨之介、針を抜いてもらおうか」に、そういえばそんなことあったな!というかまだ言ってた!ってなって笑ってしまってごめんだよ。しかも捨之介「肩と腰のツボにうっておきました」って良い人かよ…!…いや、良い人ではないな、本当の爆薬入りも爆破させてたからな。贋鉄斎は「どうりで調子が良いと思った」で肩ぐるぐる、腰ふりふり。「お気遣い、痛み入り…」とか言ってお辞儀し始めるからやっぱりチョロいな!?って思った瞬間に「デュラララ…!」と表現すればいいのか、なんなのか、とにかく擬音発しながら捨之介に突撃詰め寄りで攻撃。うん、そうだよね。でも「面白い仕事だったろ?」に「バカたれが!」って返してくれる大きさ。本当贋鉄斎が俯瞰の人であってくれたよなぁ。荷物を引きながら川を渡るのに、毎回捨之介が「あっ」って顔をするのが好きで、「お、これ水んなかもいけるね」ってキッチリ返してくる贋鉄斎がさすがだった。

 

 「じゃあ、私も」と何も持たずに去ろうとする太夫は下手へ。「あ、」って顔する兵庫に、どうすんの?追わなきゃ、って見つめる捨之介。「待った…!」って躊躇しながらも金の入った箱を持った兵庫が太夫を追いかけて、金をたくさん太夫に渡す。戸惑う太夫に「使え」「この金ぜーんぶ使い切るまで死ぬな」「そしたら死のうなんて気はなくなる」ここで太夫の死にたい気持ちを汲み取って、その気持ちは時間が解決してくれるものでもあるって示してくれるのが、妻を亡くしたことのある、おっとうであった大人の兵庫なのかな、と思う。目の前で見たときに、ここの泣きそうで強がる太夫が本当綺麗だったなぁ。

「地獄極楽紙一重!生きてりゃ良いこともあらぁ」

「そういう兵庫はどうするの?」って沙霧は、太夫と行って欲しいなぁと思ってそうなんだけど、田舎に田んぼ買って~なんて言い出す兵庫に、捨之介とともに、えぇ?ちょっとちょっと…と言わんばかりに手を伸ばす。兵庫が下手から上手に来たところで「なぁ~に言っとるだぁ!」と少吉くん登場。「渋く枯れるだなんておっとうには似合わねぇ」なんて背中を押してくれる息子、本当に出来た良い子…!「なしだ!なしだぁー!」ってばたばた太夫のところに戻る兵庫に、うんうん、そうそう!ってにこにこする捨之介と沙霧可愛い。後ろから見守ってる少吉も良い。このへんから捨之介と沙霧の距離が結構近くて、ずーっとにこにこしてるんだよね。

 

「あんたと一緒にいたい!」と言う「これが本当の俺だ!」っていう兵庫の禿げ頭にはびっくりしたよね…!そこまで笑い取りに来ます!?ってなるのに、でも、真摯に語られる言葉が凄く良かった。大人な兵庫だからこその説得力。でも、8月の最後のほうで、まさかの禿げ鬘まで取れちゃったことがあって、なのに兵庫本人だけ気付いてなくて、太夫が笑っちゃう、捨之介は気付いて…!気付いて…!って言ってる、沙霧は笑いながら捨之介の背中というか肩というかにくっつくっていうとんでも事件が勃発して、あれはめっちゃ可愛かった。少吉が「ハゲェーーーー!」って言いながら走っていったのもさすがのアドリブだった。

「りんどうよ、本当の名前はりんどう」涙も見えるけど、少し嬉しそうな太夫は綺麗だったなぁ。兵庫に「こんな大きい息子が出来ますけど」って言われて、「やっぱやめよっかな」って言っちゃうところが最高だよね。でも「生きるよ、この子たちの分までね」のところ、ちょいちょい遺髪忘れてたの知ってますよ、太夫。さくっと台詞「あの子たち」に変えてたりしてたのも知ってますよ。「沙霧、あんたも元気で!」「うん!」パッと沙霧に向かって上げる手、兵庫と腕組んで走り去っていく姿が颯爽としていて大好きだったー。

 

去って行こうとする捨之介に「金は?」と声をかける沙霧。好きにしな、ってカラッと言う捨之介に死の匂いはなくなったけど、ふらっとどこかには行ってしまいそう。でも「捨之介って名前も捨之介だ」「新しい名前を見つける旅にするよ」「あんたが救ってくれた、この首にぴったりの名前をな」ここの、左手で自分の首をトントンってする仕草好きだったー。生きていくことを、決めてくれる捨之介。「決めたーーー!」「城を作ってやるよ!」「あんたにぴったりの城をな!」ここの、ちょっと興奮気味の沙霧はもちろん良いんだけど、「ガラじゃねぇよ!」って捨之介が去って行ったあと、センターに来て、ぴたりと視線を決めながら、「もう、決めたんだ」の決意が本っ当に大好きで毎回泣いてた。

 

捨之介と沙霧が駆けて出てきて、センターでぺこり。あそこ、毎回阿部さんが川のとこばっしゃばしゃ行くからいっつも葉月ちゃんが顔背けてて笑ってしまった。これこそがステアラの真髄、ぐるぐるカテコは天魔王(最初のころだけ十字切るようなことしてたけど、そのあとはマント翻して中指を立てるお馴染みのポーズに固定)→アクションチーム→劇団員→贋鉄斎(「あっちぃー!」のポーズで手が大きくなっちゃったぁ☆とか、耳がでっかくなったぁ☆とか最後まで笑わされる)→蘭兵衛(黄泉の笛を吹いてくるり、階段を上がっていく)→無界屋(おるつが二郎衛門を見上げて頭を下げるのに二郎衛門が頷いてたり、男衆がバランスすっごいな!?ってポーズで静止してたりしてた)。…たぶん合ってる。たぶん。全員が1度ハケてから、順番に登場してスクリーンにはそれぞれの名前が表示。ここの順番はさすがに覚えてないけど、渡京がそろばん振りながら出てきたり、二郎衛門さんは毎回舞台上に右手をタッチしてイェー!ってしてったりしてたかな。ラスト3人の前に他の全員が舞台上に並んで、蘭→天→捨の順に登場。カテコは3回だったかな。毎回帰るのめっちゃ早い天蘭コンビはもはやその背中が好きです…ってなったし、二郎衛門が沙霧の肩抱くのには「この狸親父…!」ってなったりしてました。7月中旬くらいからかな、天魔王は2回目以降髑髏党幹部のほうに並んで出てきてハイタッチしてたり可愛かった。スタオベになり始めたのが夏休み明けの7月下旬くらいから?鳥髑髏は、私が初めて立ちたくて立ちたくてうずうずした公演になりました。

誕生日のキャストがいるときはカテコ3回目でお祝いしてたかな。葉月ちゃんのときはケーキ真ん中に持ってくる前に上手の葉月ちゃんの立ち位置あたりでローソク消し始めちゃったもんだから(しかも消えなくて叫ぶ。可愛い。)、阿部さんが若干あわあわして「こ、こっちでやったら…!」となり、未來くんと太一くん笑っちゃっててめっちゃ可愛くて。「沙霧は何歳くらいの設定でやってるの?」からの「(捨之介は)28くらい!」の衝撃事実の発覚とかもあり。未來くんのときはアンサンブル男性陣2人も一緒で、今度は真ん中にケーキ持ってきたんだけど、ローソク直す太一くんがずっと真ん中にいるもんだからめっちゃツッコまれて「違いますよ!」って言ったり、そのあとずっとケーキ片手に持って立ってたり(あれは持ってきた葉月ちゃんから受け取ったんだったかな)。

普通のカテコ3回目ハケのときは、あれいつからだろ、みんなが捨之介に残れ残れ、ってしながらハケてく仕様になって、たまに他のキャストが一緒に残ったり、わちゃわちゃしてた。

 

やっと書き切った…もう書いてた時期がばらっばらすぎるから全然違う解釈入り乱れてるけど知らん!こんなのいつ読み返すのかも知らないけど、とにかく大好きすぎて詰め込みたかったから満足!ゲキ×シネ、円盤化待ってます!!!